
昨年末にオープンしたコチラのお店。
行こう行こうと思いつつ、なかなか足を運べませんでした。
「学校へ行こう」
という店名が示す通り、この店のコンセプトは学校。
店の奥には黒板があり、店員さんは学生服に身を包んでいます。
スタンプカードが学生証だったりするのも凝っていますね。
新大久保でこういったコンセプト系の韓国料理店といえば、
軍隊風の「クンバリ」、70年代風の「カントンの思い出」あたりが有名。
そこに、韓国テイストの「学校」が加わったのは面白いですね。
これはもうどんどん凝った仕掛けを施してほしいものです。

などと、僕がいうまでもなく店の入口にはこんなものが。
韓国式の「けんけん」みたいな遊びなのだと教えて頂きましたが、
パッと聞いただけでは、ちょっとルールが飲み込めませんでした。
ちなみにこの手前には「本日登校生」と書かれた予約ボードも。
この店においては来店ではなく、あくまでも「登校」です。

看板メニューは全部で3つあるとのこと。
その中のひとつが、まずこちらのフライドチキンで、
ヤンニョムチキン(薬味ダレ味)と合い盛りにして頂きました。
ポイントとなるのは下味で、鶏肉を3日間かけて漬け込むとのこと。
ヤンニョムチキンよりも、フライドチキンでその威力を発揮するのですが、
真っ赤なタレがかかっていないにもかかわらず、食べるとけっこうな辛さです。
外側の衣もカリッと仕上がっており、鶏肉自体も柔らかいことに加え、
その辛さがアクセントとなるので、ずいぶんバランスがいいですね。
ヤンニョムチキンは、最初食べたときやや甘いかなとも感じましたが、
その場合は、レモンをくれるので、絞って食べるとほどよくなります。
後ろにあるキャベツの千切りサラダと、角切り大根の酢漬けはチキンとセット。
というか、これがないと! というぐらい定番の組み合わせですけどね。

もうひとつの看板メニューはがテジカルビ(豚カルビ)。
「韓国の某有名レストランのレシピ!」
と店の方が自慢しておられましたが、
確かにニンニクがほどよく効いて、甘味もフルーティ。
ただ、それよりも驚くべきは値段の1人前980円でしょうね。
カルビ2本で1人前なので、新大久保の相場を考えると安いです。
場所が歌舞伎町に入って、しかも地下のわかりにくい場所なので、
そういったこともあって、値段を抑えめにしているのでしょう。
他のメニューも全体的にリーズナブルな価格設定となっています。
特に生ビールなんか、開店記念で180円ですしね。

最後の看板メニューは即席トッポッキ(餅炒め)。
地名から新堂洞トッポッキと呼ばれることもありますが、
最近は即席トッポッキの名前で呼ばれるほうが多い気がします。
屋台と違って、注文ごとに即席で作ることから名付けられたものですが、
印象として、よりチープになった気がするのは僕だけでしょうか。
具を見て頂ければわかる通り、屋台式よりも豪華です。
ちょうど昨年6月、この即席トッポッキの店が弘大に増えていると聞き、
トッポッキの店ばかり、1日5軒巡るというハードな取材をしました。
そのときの感想を振り返るに、この料理のカギはトッピングですね。
どの店もベースは似たような感じなので、そこに好みで何を足すか。
カスタマイズしていく面白さ、というのがポイントの料理です。

ということで、あるだけのトッピングを出して頂いたのがコチラ。
基本の具と重複している追加系もありますが、
・餅(棒状)
・餅(スライス)
・ゆで卵
・揚げ餃子
・キムマリ(春雨海苔巻きを揚げたもの)
・おでん
・春雨
・チョルミョン(歯ごたえのある乾麺)
・インスタントラーメン
といった感じ。
あとはベースに海鮮を加えたり、チーズを足すことも可能。
キムパプ(海苔巻き)とのセットもあって、これもまた定番の楽しみ方ですが、
トッポッキのソースに、キムパプをつけて食べるのが推奨されます。

これまでの3品が看板料理ということにはなりますが、
実際にメニューを見ると、ずいぶんたくさんの料理があります。
・思い出のお弁当(弁当箱を振って食べる昔風弁当)
・アナコンダ卵焼き(アナコンダを思わせる巨大な卵焼き)
・ソーヤ(ソーセージ野菜炒め)
・缶詰黄桃
・丸ごと袋ラーメン
といったラインナップを見ると、コンセプトがよくわかりますね。
学校をテーマにするということは、その時代を振り返るということ。
僕の場合は留学生として、韓国で学生生活を送っただけですが、
これらの料理を見ると、いろいろ思い出される記憶があります。
特に、ソーセージ野菜炒めなんかはよく食べましたねぇ……。
フライドチキン、テジカルビ、トッポッキといった看板料理も、
学生時代にわいわい食べる象徴的な料理だといえます。
韓国好きな日本人同士で行っても、もちろん楽しめますが、
たぶん韓国人と一緒に行くとより面白い店でしょうね。
ノスタルジックなツボを刺激して、盛り上がることと思います。
ちなみに写真は手作りの蒸し餃子。
肉汁がたっぷりなので、端を持ってひと口で食べるのが作法ですが
当然のごとくアツアツの状態ではヤケドに注意する必要があります。

シメにはアサリ入りのカルグクス。
野菜たっぷり、あっさり味でほっとする味でした。
なお、このお店ですが、以前は「海屋本館」があった場所。
「韓国広場」と「カフェロッジ」の間にある路地を歌舞伎町方面に入り、
すぐ左に伸びる分かれ道のところにあるビルの地下。
ふらっと歩いていて気付くような場所ではありませんので、
めがけていく方は、迷わないように登校してください。
場所柄、朝5時まで営業しているのも特徴です。
店名:学校へ行こう(ハッキョカジャ)
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-19-7地下1階
電話:03-6233-8178
営業:11:00~翌5:00(火~日)、11:00~24:00(月)
定休:なし
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佐野良一師匠の書かれた『華麗なる朝鮮王朝』。
ずいぶんと好評のようですね。いま、アマゾンのページを見たら、
韓国・朝鮮史カテゴリで、1位を獲得しておられました。
最近はすっかり歴史分野の専門家として活躍され、
ふと見た、週刊ポストにもコメントを寄せておられたりなど。
Twitterのつぶやきを見ても、たいへんお忙しそうです。
そんな師匠と、久しぶりに話をするイベントが企画されました。
タイトルが……。
「朝鮮王朝登場人物と宮廷料理を語る会」
とけっこう迫力がありますね。
僕と師匠の話だと、食まわりのヨタ話がほとんどですが、
そこに「朝鮮王朝」などという、大仰な単語がついています。
どんな会になるか不安もありますが、韓国料理の歴史や、
宮中料理にまつわる逸話なども語っていけたらいいですね。
どのみち僕と師匠だと、堅苦しい話にはなりませんので、
お時間ある方は、ぜひ気楽にご参加頂ければ幸いです。
なお、開催日が2回あり、1回目は日曜日で交流会付き。
2日目は金曜日の午後で、交流会はありません。
=========================
<1>2012年3月25日(日)
◎時間:午後3時開場、3時30分開始-5時まで。
◎会場:「韓国料理サムスンネ」
◎定員:25人
◎参加費
①イベントのみ参加=1000円
②イベント後の会場での交流食事会込み=5000円
◎会場アクセス
*住所/新宿区新大久保2-18-10
*電話/03-3207-1768
*地図サイト
http://www.samsoon.jp/about
(2回目会場よりも少し手前です)
<2>3月30日(金)
◎時間:午後1時45分開場、2時開始-3時30分まで。
◎会場:「新宿区大久保地域センター会議室B(3階)」
◎定員:30人
◎参加費:500円
*終了後の交流会などはありません。
◎会場アクセス
*住所/新宿区新大久保2-12-7
*電話/03-3209-3961
*地図サイト
http://bit.ly/w5jn5X
(1回目会場は、ここの手前)
<3>申し込み方法
◎タイトルは朝鮮と記入し、
文章でお名前、ご希望曜日(25日は食事会参加有無も)、
参加人数、ご連絡先を記入し下記メールまで。
当日、参加費をご持参下さい
(おつりのない方から受け付けます)。
htevent26@yahoo.co.jp
主催はメディア関係者の韓国好き韓流会事務局です。
=========================

そして、 書籍紹介をひとつ。
オフ会などでよくご一緒する方が編集を担当された本で、
日韓の空港、港から、目的地への乗り継ぎ情報をまとめたものです。
日本から韓国に入国し、そのままソウルに向かうならいいですが、
到着してすぐ地方に向かう、というときに役立つ本です。
例えば、金浦空港から入国し、今年万博の開かれる麗水に向かう。
そんなプランを立てたときに、この本を見ると……。
地下鉄で龍山駅に向かい、KTXで麗水エキスポ駅に向かうルート。
あるいは龍山駅でなく、永登浦駅から乗り換えてKTXに乗るルート。
はたまた高速ターミナル駅から、高速バスで麗水を目指すルート。
以上の情報が、所要時間、運賃、始発や最終の時間、
発車間隔などとともに、表組みでまとまって掲載されています。
また、韓国だけでなく、日本国内の情報も同じく掲載されているので、
いずれ翻訳をすれば、韓国からの観光客にも活用が望めますね。
もちろん僕らが国内旅行をするときにも役立つ情報です。
羽田空港から浅草までとか、関西国際空港からなんばまでとか。
詳細については、下記の公式ページがわかりやすいです。
韓国ひとり歩き~のり継ぎ交通案内~
http://www.kok.or.jp/syuppan/k_2012book/index.htm
購入ページ
http://www.kok.or.jp/apply/syuppan.htm
個人的には仁川、金浦のような主要な空港はともかく、
マイナーな港情報あたりに、ぐっとくるものがありますね。
下関から光陽港に着いて、そこから順天に向かうルートとか。
境港から東海港に着いて、そこから江陵に向かうルートとか。
こういう情報が、詳細に載っているのは夢が広がります。
あとは付録についている、「食の町」へのアクセスもかなりマニアック。
ソウルから蓬坪に行って、マッククスを食べるためのルートとか。
ソウルから扶安に行って、アサリ粥を食べるためのルートとか。
済州島から馬羅島に行ってチャジャンミョンを食べるためのルートとか。
眺めているだけでも妄想が膨らみます。
ちなみに残り日数わずかですが、2月内に購入すると100円引き。
興味のある方は、ぜひお早めにどうぞ。

昨日は「八田・本田の楽しい韓食ナラ」のスピンオフ企画。
昨年2月に引き続き、「第2回マッコリの会」が開催されました。
ご参加頂いた皆様、本当にありがとうございます。
事前にブログでもお伝えしましたが、今回のテーマは……。
「フレーバー系マッコリの逆襲!」
まあ、逆襲というのは僕の勝手な思い込みなのですが、
2012年のマッコリ事情を占うにあたり、話題の中心はフレーバー系かなと。
そこで事前にブログのお知らせではこんなことを書きました。
=========================
もともと、マッコリブームは黒豆のヒットが大きかったこともあり、
フレーバー系の活躍が下地となって、作られてきた経緯があります。
最近は生マッコリの普及にも押されて、やや印象が薄かったのですが、
昨年あたりから市場が広がって、また新たな魅力が出てきました。
大手メーカーの商品から、日本酒の酒造が地域性を活かしたものまで、
いろいろ集めて、フレーバー系の可能性を再発見するのが狙いです。
「マッコリ好きが飲んでうまいフレーバーはこれだ!」
というような、感じになったらいいなぁと。
=========================
そんな思惑が成功したかどうかはわかりませんが、
ともかくも、冒頭の写真にある9種類のマッコリをみんなで楽しみました。
ひとつひとつここでも振り返ってみたいと思います。

まずは昨年末に発売されたE-DONの「にっこりマッコリ」。
発泡性のある缶タイプで、おこめ、ゆず、ざくろという3種類です。
この場合の「おこめ」はプレーンなので、フレーバー系とは違いますが、
せっかく3種類あるので、これも一緒に試飲対象としました。
会場での反応を見る限り、ざくろはのしっかりしたフレーバーに対し、
ゆずはもっとゆずらしさが欲しい、という声がよく聞こえてきました。
ゆず茶のように、濃い風味と甘さを期待する方が多かったようです。
それとこの3種、前回の「韓食ナラ」でもそうだったのですが、
プレーンな「おこめ」を熱烈に支持する方がけっこういらっしゃいます。
僕自身も同意見で、缶タイプの発泡性マッコリの中では、
ずいぶんとバランスがよく、飲み飽きない銘柄といった印象。
缶マッコリのイチオシを聞かれたら個人的にはこれですね。
3%のアルコール度数が個人的にはやや物足りないものの、
サッポロ&CJ「おいしいマッコリ<ピンクグレープフルーツ>」が対抗馬です。
にっこりマッコリ(E-DONG)
http://www.e-don.co.jp/
http://www.e-don.co.jp/jp/produt/pro_intro.aspx

こちらも昨年12月発売の「高矢禮ラズベリーマッコリ」。
もともと「高矢禮マッコリ」といえば高級路線の代表格ですが、
こちらもラズベリーの風味が濃く、贅沢な造りという感じでしたね。
会場でもこれをいちばんに評価する人はけっこう多かったです。
製造元が麹醇堂という伝統酒メーカーなので、
自慢の生米醸造法で造られているというのもウリのひとつ。
蒸し米よりも、米本来の栄養価が損なわれにくいそうです。
百歳酒ジャパン(麹醇堂)
http://www.bekseju.co.jp/
http://www.bekseju.co.jp/goshire-4.htm

ここから日本産のフレーバー系マッコリ。
茨城県水戸市にある吉久保酒造の「うさぎのダンス梅マッコリ」です。
水戸といえば偕楽園の「梅まつり」でもよく知られた梅どころ。
そんな地元性をマッコリに詰め込んだ、なんとも春らしい銘柄です。
上澄みを飲むと梅酒に近く、混ぜて飲むとそれがまろやかに。
今回の会は、けっこう好みが割れたほうだと思いますが、
その中でもいちばん人気を選ぶなら、間違いなくこれでしたね。

そして、吉久保酒造からもうひとつ。
今月から期間限定で発売になった「桜まっこり」です。
桜が咲いている時期だけの限定なので、九州から発売が始まり、
桜前線に沿って日本列島を北上。桜が散ったら販売終了とのこと。
梅マッコリの次に飲むべきマッコリという設定ですが、
それをちょっと気の早い段階で試飲ということになりました。
飲んだ瞬間にみなさんが口にしたのは、
「桜餅!」
というセリフ。
桜のフレーバーと、米のお酒という組み合わせから、
ある程度、その味が想像できるかもしれませんね。
花見の席に持参すると、きっと受けると思います。
吉久保酒造
http://www.ippin.co.jp/
http://www.ippin.co.jp/jp/items/itm_usagidance.html

高知県安芸市の菊水酒造が造っている商品をふたつ。
固有の銘柄がないようで、ただ「マッコリ」と書かれています。
左が「ぶんたんマッコリ」で、右が「マンゴーマッコリ」。
ぶんたんは高知県産のものを使用していると聞きました。
華やかなラベルが目を引くのは、
「女性による女性のためのお酒づくりプロジェクト」
として開発されたのが大きいのでしょうね。
菊水酒造では、ほかにも果実系のお酒や、コラーゲン入りのお酒、
アイスにかけるお酒など、個性的な商品を造っています。
ぶんたんはさらっとした酸味と柑橘系の香りがよく出た感じ。
マンゴーはのってり濃厚で、「ネクター!」という表現も飛び交いました。
どちらも好評でしたが、マンゴーのほうはやや意見が割れた感も。
「うん、マンゴーらしい!」 という意見がある反面、
「いや、もっとマンゴーらしさを!」という声も聞こえました。
菊水酒造
http://www.tosa-kikusui.co.jp/
http://kikusuishop.jp/shopbrand/010/010/X/

フレーバー系マッコリだけでは寂しいので、生マッコリもひとつ。
缶の「にっこりマッコリ」同様、こちらも昨年12月からの新商品です。
従来の「にっこりマッコリ」に比べて、やや甘口になっているのが特徴。
あくまでも主役はフレーバー系マッコリだったのですが、
むしろ、途中からはこればっかり飲んでいた方も多かったですね。
企画は企画として、
「やっぱり生がいい!」
というのは、まあ当然のことでしょう。
生マッコリも用意しておいてよかった、とひそかに思った次第です。
以上、生マッコリも含めて全部で9種類。
おかげさまで、終始楽しく試飲することができました。
おそらく今後も、フレーバー系の商品はどんどん出てくるでしょうね。
そして韓国でも日本でも、ご当地系の銘柄はもっと増えていいはず。
マッコリはほとんどの果物と合わせることが可能ですし、
果物以外でも、穀物系や薬効系などいろいろなジャンルがあります。
新しいご当地名物として、地域起こしにも使えるのではないかと。
フレーバー系マッコリのさらなる躍進を期待したいところです。

そして、これらの試飲をした後は、抽選会のかわりにクイズ大会。
参加していない方には「なんのこっちゃ?」という画像ですが、
象徴的な1枚として、こちらを貼り付けておくことにします。
外した方は、改めてご確認頂いてもいいかもしれません。
クイズ大会の成績が優秀だった方には商品をプレゼント。
各企業様より、以下の商品をご提供頂きました。
・「スンドゥブ」など韓国料理の素シリーズ(丸大食品)
・「スンドゥブチゲの素」(エバラCJ)
・「ボストン美術館 日本美術の至宝」チケット(NHKプロモーション)
・「韓国ひとり歩き~のり継ぎ交通案内~」(国土計画協会)
いつも本当にありがとうございます!

さて、次回の韓食ナラですが、タットリタン(鶏と野菜の鍋)を作ります。
韓国の家庭では、おもてなし用としても活躍しているこの料理。
鍋料理としてでもいいですし、汁を少なめで大皿料理にもできます。
=========================
★第11回「八田・本田の楽しい韓食ナラ」(タットリタン)
■日時:2012年3月24日(土)15時~17時 受付:14時45分
■場所:イドンカルビ
■会費:4000円
■主催:ケーテレコム株式会社
※みんなでタットリタン(鶏と野菜の辛い鍋)を作ります。
※マッコリ飲み放題、抽選会があり、お土産がつきます。
※エプロンを持参してください。
※終了後は有志で2次会も開催します。
【会場】
店名:イドンカルビ
住所:東京都新宿区新宿5-12-2
電話:03-3351-2057
最寄:新宿3丁目駅、東新宿駅より徒歩5分
http://r.tabelog.com/tokyo/A1304/A130402/13035516/
【参加申込み】
参加される方の住所・氏名・電話番号・メールアドレスまたは
ファックス番号を下記にメールしていただくか、お電話ください。
Mail: krisk1@k-telecom.co.jp
TEL : 03-6435-0899
参加費は下記口座まで事前にお振り込みください。
当日受付でのお支払いも可能ですが、参加応募多数の場合は
事前振込みをさせて頂いた方を、優先させていただきますので
あらかじめご了承下さい。
三菱東京UFJ銀行 目黒支店
普通 3819031 口座名:ケーテレコム (カ)
=========================
ご都合よい方は、ぜひお誘い合わせのうえご参加ください!
以上、「マッコリの会」後記と、次回のお知らせでした。
コリアうめーや!!第263号
<ごあいさつ>
2月15日になりました。
すでにブログなどではお伝えしましたが、
2月2日に娘が生まれました。
僕ら夫婦にとっては初めての子どもです。
先週になって親子ともども無事退院し、
家の中はぐっと賑やかになりました。
このメルマガを書きながらも、
合間合間にてんてこ舞い。
泣き声が聞こえて飛んで行っては、
おしめだミルクだと大忙しです。
まあ、何よりそれが楽しいですけどね。
そんな中、今号では初めての育児にひっかけて、
もっと些細な自分の初体験を語ります。
どうでもいいぐらいの小さな話なのですが、
あきれずお付き合い頂ければ幸いです。
コリアうめーや!!第263号。
記憶をたぐり寄せつつ、スタートです。
<釜山の豚焼肉はつゆだく上等!!>
初めて店で牛丼を食べたのは高校時代だった。
同じ学校の友人が牛丼店でアルバイトをしており、
働きぶりを冷やかしに、わざわざ足を運んだのだった。
友人は突然の訪問を、ひとしきり驚いたあと、
少し鼻高げにパパッと牛丼を作ってくれた。
僕にとってそれまで牛丼という料理は、
自宅で父親が作る日曜日の昼ごはんであった。
それは今思うに、すき焼き丼に近いようなもので、
牛肉だけでなく豆腐、白滝、ゴボウ、ネギも入っていた。
家庭料理としては栄養的にもよいのだろうが、
牛丼店のそれは、もっと実質本位の迫力に満ちていた。
「ごはんの上に牛肉ばかりが載っている!」
それは食べ盛りの高校生にとって、
身悶えせんばかりに魅力的な姿であった。
友人が作ってくれた特盛りの牛丼を、
むさぼるように食べたのを覚えている。
そして、話は少し先に進む。
別のとき、その友人と牛丼を食べに行った。
カウンターに並んで、ふたりとも並を注文したのだが、
そのタイミングで友人が妙なことをいった。
当時はその単語を理解できなかったのだが、
いま振り返ってみると、彼のセリフは、
「並、つゆ抜き」
だったように思う。
牛丼店ではいくつかの符牒が使われており、
彼のいった、つゆ抜きもそのひとつ。
要は「牛丼のつゆを少なめで」という注文であり、
この逆バージョンは「つゆだく」と呼ばれる。
いまではこうしたカスタマイズも一般的だが、
当時の僕にそんな常識はなく、
「な、なにか、カッコいい……」
と彼の業界人的な姿に感銘を受けたのだった。
いつか僕も、符牒を使って頼んでみよう。
その瞬間、そう心に決めたのを覚えているが、
なぜかそれは、いまだに果たされていない。
たぶん、こういうことなのだと思う。
自意識過剰な10代後半、20代入口までは、
「通ぶった注文と思われたら嫌だな」
という思いが少しあった。
あるいは自慢気に特別な注文をして、
「並を、つゆ抜きで!」
「は?」
という事態になったら恥ずかしいとも思っていた。
すかした注文で失敗したら赤面もいいところ。
そのまま店を飛び出すしか道は残されていない。
あるいはその後になってネット上で、
「お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんかと」
というコピペが流行ったのも大きい。
そういわれてみると、僕は普段の牛丼に満足しており、
別段、つゆを抜いたり増やす必要は感じていない。
まさに、それをいいたいだけの欲求であり、
それは妙な恥ずかしさとして自分の中に残った。
傍から見れば、
「考えすぎじゃないの?」
というような話だが、当時の僕といえば、
ガラスの胃腸と、チキンハートのダブルパンチ。
牛丼を食べに行くたびに片隅で意識しつつも、
「まあ、またの機会にしよう」
と全面的に逃げ腰であった。
すると年齢を経るうちに、いつしか気持ちも薄れ、
だんだん牛丼の食べ方など、どうでもよくなってくる。
むしろ、つゆ抜き、つゆだく以前に、
「ごはん少なめで」
という注文をすることすら最近はあったりする。
それは店の中での符牒として、
「軽いの1丁!」
と変換されるのだが……。
いや、ちょっと待て待て。
牛丼の符牒話から、韓国料理に話をつなげるつもりが、
この勢いだと牛丼だけで終わる気がしてきた。
急ブレーキをかけて、話を本筋に戻そう。
問題はつゆ抜き、つゆだくにおける「だく」のほう。
先日、僕は韓国で焼肉のつゆだくに出会った。
収集がつかなくなった牛丼話はいったん放置して、
舞台は急転直下、釜山へと飛んでゆく。
この話を書きながら、唐突に思ったのだが、
釜山というのは、つゆだくの聖地ではないだろうか。
なにしろ、釜山を代表する郷土料理として、
テジクッパプ(豚スープごはん)が君臨している。
ぐつぐつ煮込んだとんこつスープをごはんにかけ、
ざらざら、ずばずばと豪快にすすりこむ料理。
これをどんぶり料理の延長線上として考えるなら、
つゆだくだくだくだくだくだく、ぐらいはあるだろう。
まあ、この論理は自分でも無理があると思うので、
次の根拠に、メルマガの第99号を紹介しよう。
第99号/釜山のタコ炒めはつゆだく上等!!
http://www.koparis.com/~hatta/koriume/koriume99.htm
詳細は読んで頂くとして、概要だけ説明すると、
釜山にはちょっと変わったテナガダコの炒め物がある。
全国的には炒め物として通っている料理なのだが、
釜山においては汁気が多く、炒め物と鍋料理の中間ぐらい。
僕はそれを「タコ炒めのつゆだく」と表現した。
タイトルの「つゆだく上等!」にあまり意味はないが、
今号でも一応「つゆだく上等!」を踏襲してみた。
先にも語った通り、釜山で見つけた焼肉のつゆだく。
「こんな焼肉があったのか!?」
とえらく驚いたのでその報告をしたい。
発見したのは、釜山駅からもほど近い、
草梁洞(チョリャンドン)というエリア。
地下鉄1号線草梁駅と釜山駅のちょうど真ん中に
草梁洞テジカルビ(豚カルビ)通りがある。
草梁洞がテジカルビで有名になったのは、
1960年代頃からと伝えられている。
地元の人によれば、
・草梁洞は釜山港のすぐ近くである
・当時は港で働く、肉体労働者がたくさん住んでいた
・彼らが好む料理といえば、何より肉である
・安くて美味しい焼肉店が増えたのは至極当然
・それより兄ちゃん、食べて行くの?
という経緯らしい。
近年は店も減少傾向にあるとのことだが、
それでも道の両脇、路地の中にも焼肉店がずらり並ぶ。
レトロな雰囲気も手伝ってなかなかオツなところだ。
その中から、古株店の「銀河カルビ」に入り、
名物のヤンニョムカルビ(味付けカルビ)を注文した。
この店ではテジカルビのことをそう呼んでいる。
すると出てきたのが、そう、つゆだく。
鉄板の上にアルミホイルを敷いて焼くのだが、
その四辺が持ち上がって、囲むようになっている。
どこか紙鍋に近いような見た目のところへ、
豚肉と一緒にたっぷりの漬けダレが流し込まれる。
周囲には「だばだば」という擬音が飛び交い、
やがて「ひたひた」、そして「ちゃぷちゃぷ」になった。
プルコギのように、煮汁に絡めながら焼くのではなく、
たっぷりの液体に浸った状態で焼くスタイル。
長いこと韓国でテジカルビを食べてきたが、
こんなにもタレをたくさん投入する店は初めて見た。
ぐつぐつ煮立った汁の中で、豚肉に火が通り、
やがては煮詰まったような感じで汁気もとんでいく。
その頃合いが食べごろということなのだが、
豚肉が醤油色になって、にわかには手が出しにくい。
「これ、すごく塩辛いんじゃ……」
そう思いつつ、恐る恐る食べてみると、
意外なことに味付けはぴったりであった。
甘味を強めに感じるレトロ風ではあるが、
決してしつこくはなく、後味はむしろさっぱり。
肉も柔らかく、脂が乗っているので、
「つゆだくウマイ!」
と最終的には結論が出た。
なんとも不思議なつゆだく体験である。
そして、再び話は牛丼に戻る。
釜山のつゆだく焼肉が美味しかったのなら、
牛丼のつゆだくにも、感動はあるのではないか。
そんなことを帰国後に思い、
「いまこそ僕はつゆだくを食べる時だ!」
と近所の牛丼店に足を運んだ。
カウンターに腰かけて、
「大盛り、つゆだく」
と大人の余裕で注文をする。
「大盛り、つゆだく1丁!」
と元気な声でオーダーが通り、
ほどなく、つゆだくの牛丼がやってきた。
出てきた瞬間の見た目は意外に普通だったが、
ごはんをひと口食べると、すぐ下に汁がにじんでいた。
汁の気配は、食べ進むごとに濃くなっていき、
最後はお茶漬けのように、ごはんをさらさらかきこんだ。
「これはまさしくつゆだく!」
と納得できる「だく」具合であった。
その瞬間、高校時代からの心残りが解消され、
小さなことだが、なにかを達成した気分になった。
釜山のつゆだく焼肉は刺激的な体験だったなら、
牛丼のつゆだくは解放的な体験であろう。
だが、食べ終えたからこそ、いま思う。
「やっぱり牛丼は普通がいちばん」
おそらく僕は今後も普通の牛丼を食べる。
僕のつゆだくは草梁洞のテジカルビだけでよいのだ。
<店舗情報>
店名:銀河カルビ
住所:釜山市東区草梁2洞264-1
電話:051-467-4303
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
いまさら牛丼のつゆだくを食べた。
たったそれだけの話なのかもしれません。
コリアうめーや!!第263号
2012年2月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
メールマガジン購読・解除用ページ
http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669
<ごあいさつ>
2月15日になりました。
すでにブログなどではお伝えしましたが、
2月2日に娘が生まれました。
僕ら夫婦にとっては初めての子どもです。
先週になって親子ともども無事退院し、
家の中はぐっと賑やかになりました。
このメルマガを書きながらも、
合間合間にてんてこ舞い。
泣き声が聞こえて飛んで行っては、
おしめだミルクだと大忙しです。
まあ、何よりそれが楽しいですけどね。
そんな中、今号では初めての育児にひっかけて、
もっと些細な自分の初体験を語ります。
どうでもいいぐらいの小さな話なのですが、
あきれずお付き合い頂ければ幸いです。
コリアうめーや!!第263号。
記憶をたぐり寄せつつ、スタートです。
<釜山の豚焼肉はつゆだく上等!!>
初めて店で牛丼を食べたのは高校時代だった。
同じ学校の友人が牛丼店でアルバイトをしており、
働きぶりを冷やかしに、わざわざ足を運んだのだった。
友人は突然の訪問を、ひとしきり驚いたあと、
少し鼻高げにパパッと牛丼を作ってくれた。
僕にとってそれまで牛丼という料理は、
自宅で父親が作る日曜日の昼ごはんであった。
それは今思うに、すき焼き丼に近いようなもので、
牛肉だけでなく豆腐、白滝、ゴボウ、ネギも入っていた。
家庭料理としては栄養的にもよいのだろうが、
牛丼店のそれは、もっと実質本位の迫力に満ちていた。
「ごはんの上に牛肉ばかりが載っている!」
それは食べ盛りの高校生にとって、
身悶えせんばかりに魅力的な姿であった。
友人が作ってくれた特盛りの牛丼を、
むさぼるように食べたのを覚えている。
そして、話は少し先に進む。
別のとき、その友人と牛丼を食べに行った。
カウンターに並んで、ふたりとも並を注文したのだが、
そのタイミングで友人が妙なことをいった。
当時はその単語を理解できなかったのだが、
いま振り返ってみると、彼のセリフは、
「並、つゆ抜き」
だったように思う。
牛丼店ではいくつかの符牒が使われており、
彼のいった、つゆ抜きもそのひとつ。
要は「牛丼のつゆを少なめで」という注文であり、
この逆バージョンは「つゆだく」と呼ばれる。
いまではこうしたカスタマイズも一般的だが、
当時の僕にそんな常識はなく、
「な、なにか、カッコいい……」
と彼の業界人的な姿に感銘を受けたのだった。
いつか僕も、符牒を使って頼んでみよう。
その瞬間、そう心に決めたのを覚えているが、
なぜかそれは、いまだに果たされていない。
たぶん、こういうことなのだと思う。
自意識過剰な10代後半、20代入口までは、
「通ぶった注文と思われたら嫌だな」
という思いが少しあった。
あるいは自慢気に特別な注文をして、
「並を、つゆ抜きで!」
「は?」
という事態になったら恥ずかしいとも思っていた。
すかした注文で失敗したら赤面もいいところ。
そのまま店を飛び出すしか道は残されていない。
あるいはその後になってネット上で、
「お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんかと」
というコピペが流行ったのも大きい。
そういわれてみると、僕は普段の牛丼に満足しており、
別段、つゆを抜いたり増やす必要は感じていない。
まさに、それをいいたいだけの欲求であり、
それは妙な恥ずかしさとして自分の中に残った。
傍から見れば、
「考えすぎじゃないの?」
というような話だが、当時の僕といえば、
ガラスの胃腸と、チキンハートのダブルパンチ。
牛丼を食べに行くたびに片隅で意識しつつも、
「まあ、またの機会にしよう」
と全面的に逃げ腰であった。
すると年齢を経るうちに、いつしか気持ちも薄れ、
だんだん牛丼の食べ方など、どうでもよくなってくる。
むしろ、つゆ抜き、つゆだく以前に、
「ごはん少なめで」
という注文をすることすら最近はあったりする。
それは店の中での符牒として、
「軽いの1丁!」
と変換されるのだが……。
いや、ちょっと待て待て。
牛丼の符牒話から、韓国料理に話をつなげるつもりが、
この勢いだと牛丼だけで終わる気がしてきた。
急ブレーキをかけて、話を本筋に戻そう。
問題はつゆ抜き、つゆだくにおける「だく」のほう。
先日、僕は韓国で焼肉のつゆだくに出会った。
収集がつかなくなった牛丼話はいったん放置して、
舞台は急転直下、釜山へと飛んでゆく。
この話を書きながら、唐突に思ったのだが、
釜山というのは、つゆだくの聖地ではないだろうか。
なにしろ、釜山を代表する郷土料理として、
テジクッパプ(豚スープごはん)が君臨している。
ぐつぐつ煮込んだとんこつスープをごはんにかけ、
ざらざら、ずばずばと豪快にすすりこむ料理。
これをどんぶり料理の延長線上として考えるなら、
つゆだくだくだくだくだくだく、ぐらいはあるだろう。
まあ、この論理は自分でも無理があると思うので、
次の根拠に、メルマガの第99号を紹介しよう。
第99号/釜山のタコ炒めはつゆだく上等!!
http://www.koparis.com/~hatta/koriume/koriume99.htm
詳細は読んで頂くとして、概要だけ説明すると、
釜山にはちょっと変わったテナガダコの炒め物がある。
全国的には炒め物として通っている料理なのだが、
釜山においては汁気が多く、炒め物と鍋料理の中間ぐらい。
僕はそれを「タコ炒めのつゆだく」と表現した。
タイトルの「つゆだく上等!」にあまり意味はないが、
今号でも一応「つゆだく上等!」を踏襲してみた。
先にも語った通り、釜山で見つけた焼肉のつゆだく。
「こんな焼肉があったのか!?」
とえらく驚いたのでその報告をしたい。
発見したのは、釜山駅からもほど近い、
草梁洞(チョリャンドン)というエリア。
地下鉄1号線草梁駅と釜山駅のちょうど真ん中に
草梁洞テジカルビ(豚カルビ)通りがある。
草梁洞がテジカルビで有名になったのは、
1960年代頃からと伝えられている。
地元の人によれば、
・草梁洞は釜山港のすぐ近くである
・当時は港で働く、肉体労働者がたくさん住んでいた
・彼らが好む料理といえば、何より肉である
・安くて美味しい焼肉店が増えたのは至極当然
・それより兄ちゃん、食べて行くの?
という経緯らしい。
近年は店も減少傾向にあるとのことだが、
それでも道の両脇、路地の中にも焼肉店がずらり並ぶ。
レトロな雰囲気も手伝ってなかなかオツなところだ。
その中から、古株店の「銀河カルビ」に入り、
名物のヤンニョムカルビ(味付けカルビ)を注文した。
この店ではテジカルビのことをそう呼んでいる。
すると出てきたのが、そう、つゆだく。
鉄板の上にアルミホイルを敷いて焼くのだが、
その四辺が持ち上がって、囲むようになっている。
どこか紙鍋に近いような見た目のところへ、
豚肉と一緒にたっぷりの漬けダレが流し込まれる。
周囲には「だばだば」という擬音が飛び交い、
やがて「ひたひた」、そして「ちゃぷちゃぷ」になった。
プルコギのように、煮汁に絡めながら焼くのではなく、
たっぷりの液体に浸った状態で焼くスタイル。
長いこと韓国でテジカルビを食べてきたが、
こんなにもタレをたくさん投入する店は初めて見た。
ぐつぐつ煮立った汁の中で、豚肉に火が通り、
やがては煮詰まったような感じで汁気もとんでいく。
その頃合いが食べごろということなのだが、
豚肉が醤油色になって、にわかには手が出しにくい。
「これ、すごく塩辛いんじゃ……」
そう思いつつ、恐る恐る食べてみると、
意外なことに味付けはぴったりであった。
甘味を強めに感じるレトロ風ではあるが、
決してしつこくはなく、後味はむしろさっぱり。
肉も柔らかく、脂が乗っているので、
「つゆだくウマイ!」
と最終的には結論が出た。
なんとも不思議なつゆだく体験である。
そして、再び話は牛丼に戻る。
釜山のつゆだく焼肉が美味しかったのなら、
牛丼のつゆだくにも、感動はあるのではないか。
そんなことを帰国後に思い、
「いまこそ僕はつゆだくを食べる時だ!」
と近所の牛丼店に足を運んだ。
カウンターに腰かけて、
「大盛り、つゆだく」
と大人の余裕で注文をする。
「大盛り、つゆだく1丁!」
と元気な声でオーダーが通り、
ほどなく、つゆだくの牛丼がやってきた。
出てきた瞬間の見た目は意外に普通だったが、
ごはんをひと口食べると、すぐ下に汁がにじんでいた。
汁の気配は、食べ進むごとに濃くなっていき、
最後はお茶漬けのように、ごはんをさらさらかきこんだ。
「これはまさしくつゆだく!」
と納得できる「だく」具合であった。
その瞬間、高校時代からの心残りが解消され、
小さなことだが、なにかを達成した気分になった。
釜山のつゆだく焼肉は刺激的な体験だったなら、
牛丼のつゆだくは解放的な体験であろう。
だが、食べ終えたからこそ、いま思う。
「やっぱり牛丼は普通がいちばん」
おそらく僕は今後も普通の牛丼を食べる。
僕のつゆだくは草梁洞のテジカルビだけでよいのだ。
<店舗情報>
店名:銀河カルビ
住所:釜山市東区草梁2洞264-1
電話:051-467-4303
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
いまさら牛丼のつゆだくを食べた。
たったそれだけの話なのかもしれません。
コリアうめーや!!第263号
2012年2月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
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http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669

「1度遊びにおいで!」
といわれていたマッコリの酒造に出かけてきました。
住所は千葉県富里市ですが、最寄りは成田駅でした。
いつも成田空港に行く道のりの、ちょっと手前で下車。
「とんいマッコリ」を造っている「木川工房」に到着します。
国内でマッコリのために酒造免許を取得した例はこれまでもありましたが、
飲食店を兼ねていない、というのはここが初めてではないかなと。
純粋に酒造としてのみ機能しているマッコリ専門の醸造場です。
なので、マッコリの横に並んでいる料理は、
「事前にいってくれればもっと準備したのに!」
という杜氏さんの奥様に急遽ご用意頂いたもの。
醸造場の事務所前に陣取って、試飲をさせて頂いた次第です。
サラダ、ソーセージのジョン(衣焼き)、甘栗などとともに……。

こんな感じで鍋が出てきたのは感動しましたね。
ストーブの上にあるだけで、より美味しそうに見えるのはなぜでしょう。
酒造にお邪魔して、手料理をふるまって頂いた幸せが、
このビジュアルに集約されているように感じます。

しかもただのチゲではなく、タイが入ったメウンタン(辛口の海鮮鍋)。
ふわふわと柔らかな身もさることながら、汁がめちゃめちゃうまかったです。
マッコリをぐびぐびやりながら、旨い汁をすする至福を満喫しました。
んー、いま思い返してもたまらない贅沢。

マッコリを造っている場所はこんな感じ。
高敞甕器(コチャンオンギ)の名で知られる高敞産の甕を用い、
伝統製法にこだわるというのが「とんいマッコリ」の自慢です。
そもそも「とんい」というのも甕という意味だそうですね。
原料にもこだわりがあり、使用している米は千葉県産の多古米100%。
皇室献上米としても使用されたブランド米を使っているのは、
原価はかかっても、いいものを造るのが杜氏さんのポリシーとか。
ちなみに杜氏さんのご出身は群山(生まれは済州島)で、
マッコリの製法は、地元で名人といわれたお母様から習ったもの。
教えてもらった製法そのままに造るのを心がけているそうです。
韓国の伝統技術と、日本のブランド米が融合したマッコリ。
それをフレッシュな生の状態で気軽に飲めるというのは、
いやはやいい時代になったなぁ、としみじみ思います。
免許の取得が昨年6月ということなので、まだ知名度は低く、
お店で見かける頻度も少ないですが、これから伸びて欲しいですね。
飲みごたえのある濃さと、適度な発泡感、そして控えめな甘味。
加えて発酵が進んだときの、ほのかな酸味を楽しめる方には特におすすめ。
もちろん、通常の出荷では酸味のないフレッシュな状態ですが、
この日、試飲させて頂いたものが、ちょうど酸味の出始めでいい感じでした。
1本1200円(1リットル)とややお高めですが、
公式HPから直接メールで購入もできます。
店名:木川工房
住所:千葉県富里市日吉台3-24-2
電話:0476-85-8708
http://makkoli.biz/

ブログのコメント欄にオープンの情報を頂いておきながら、
なかなか足を運べなかったのですが、ようやく念願がかないました。
韓国好きならば、このビジュアルにぐっとくる人は多いはず。
というようなことを、実は2009年10月にも書きましたね。
カリカリとしたコーヒー風味の生地と、中に入った塩気の強いバター。
その組み合わせが何よりの特徴である「韓国で人気の」パンです。
というところで、一応の補足を入れておきたいと思いますが、
「韓国で人気のパン」ではあるものの、「韓国生まれのパン」ではありません。
そのややこしい発祥由来については、まだ僕もわからないことが多いですが、
マレーシアやシンガポールを中心とするアジアで広まったパンのひとつ。
韓国では2007年頃から店が増え始めて専門チェーンが乱立。
それが日本人観光客にも波及したことで韓国好きにとっては、
韓国で食べた「あのパン」ということになっております。
そのあたりの経緯は、下記の記事をご参照ください。
コメント欄にも詳しい方からもいろいろな情報を寄せて頂いたことで、
「このパン」について、ひと通りの理解ができるようになっています。
新宿「サンピエロ新宿店」でデリロティ購入。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1028.html
そして、上記記事の時点では購入場所が「サンピエロ」でしたが、
このほど僕が訪れたのは、昨年12月に誕生した直営日本1号店。
また、海外初店舗ということにもなるんですかね。
アジア各国で展開する有名チェーンがほかにもありますが、
こちらの「DELI ROTI」は、韓国で誕生した新たなチェーンです。

早速、店内で頂ていきました。
わかりにくいかもしれませんが、中が空洞になっており、
黄色く見えるのが、たっぷりと入ったバターです。
ああ、これこれ。これが食べたかった! というのが素直な本音。
ちなみに1個200円。ドリンクとのセットで350円。
ドリンクはコーヒー系を中心に、韓国の伝統茶も用意されています。
せっかくなので僕は柚子茶をチョイスしてみました。

店内で手作りしているのがウリです。
キッチンの中には、熟成中と見られる生地がたくさん見えました。
コーヒークリームをうずまき状に載せて焼いたらできあがり。
あまり広くない店舗なので、テイクアウトが主になりますが、
テーブル10席、カウンター4席あって、食べてもいけます。

店の外観はこんな感じ。
西日暮里駅を出て不忍通り方面(山手線の内側)に進み、
道灌山下の交差点にぶつかったら、すぐ右手に店があります。
まだネットを検索しても、ほとんど情報は出てきませんが、
僕がいる間にも、
「7個ください!」
というお客さんが来るなど、地元では定着しつつある様子。
お土産や、差し入れなどにはちょうどいいかもしれませんね。
なお、お店には店員さんひとりだったので、大量に購入する場合は、
事前に予約しておくほうがベターではないかと思います。
ちなみに2号店が早くも準備中で、場所は尾山台になるとのこと。
ぜひあちこちに作って気軽に食べられるようにして欲しいですね。
店名:DELI ROTI
住所:東京都文京区千駄木3-49-1
電話:03-5834-7558
営業:10:30~19:00
定休:なし
http://www.deliroti.com/(韓国語)

韓国では出産後の母親にミヨックク(ワカメスープ)を食べさせます。
ワカメにはカルシウム、カリウム、ヨウ素といったミネラルが豊富に含まれ、
産後の回復に最適である、むしろ必須である、というのが理由です。
病院でもミヨッククが出ますし、自宅に戻ってきてからもミヨックク。
朝、昼、晩に、数度の間食として、ひたすらミヨッククを食べ続け、
それが3ヶ月間は続くというのが、韓国での常識です。
そんな背景から、僕に子どもができたと聞くと、
「八田くん、毎日ミヨックク作らなきゃ!」
「そうだ、韓国からいいワカメを取り寄せて送ろう!」
「そもそもワカメというのはだね……」
という話があちこちから。
家に3ヶ月分のワカメが届いても、さすがに使い切れないので、
気持ちだけありがたく頂き、丁重にお断りさせて頂きました。
とはいえ、まったく作らないのもなんだなと思っていたところ、
韓国の母と慕う、浅草&東上野「四季の里」のママさんから……。
「ミヨックク作ったげるから来なさい!」
というお言葉が。
このブログを古くから見ている人ならご存知でしょうが、
「四季の里」のママさんが作るミヨッククは特別うまいんですよね。
韓国からの留学生が、母の味を思い出して涙を流すレベル(実話)。
常連客になって、かつ誕生日に行くと特別に作って頂ける料理です。
それなら行かねば、ということになったのですが、
そこで問題となったのが、お店で作ったミヨッククをどう持ち帰るか。
「入れ物は自分で持ってきなさいね」
ということだったので、適当な容器を探したのですが、
こういった場合、韓国のお母さんが用意するのは例外なく大量です。
果たして、どのぐらいの容器を持っていけばよいのか……。
せっかくなので、みなさんも一緒にお考えください。
=========================
<韓国理解度テスト>
最近、子どもが生まれたあなたに韓国料理店のママさんが、
「ミヨッククを作ってあげるから容器を持ってきなさい」といいました。
どのぐらいのサイズの容器を持っていけばよいでしょう。
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正解はこの下。
自分なりの答えを、頭の中に思い浮かべてから、
正解が出てくるまで画面をスクロールさせてください。
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はい、正解はこのぐらい。
念のため書いておきますが、黒いのはすべてワカメです。
目安としてiPhoneを置いてみましたが、想像つきますかね。
僕が持っていったタッパーは4.5リットル入りでしたが、
見ての通り、まるで足りていません。フタを閉めるとか論外です。
せっかくなので重さを計ってみましたが、8キロありました。
たぶん倍量のタッパーを持っていったとしても入らないので、
10リットル以上の容器を持っていくというのが正解です。
鍋にもまだ余っていて、入るならもっと入れてくれたはずですし。
韓国理解度の目安としてはこんな感じでどうですかね。
<10リットル以上>
→韓国人、または韓国を非常によく理解している
<5リットル以上、10リットル未満>
→韓国をそこそこ理解している
<5リットル未満>
→八田氏レベル。まだまだ修行が必要
みなさんの韓国理解度はいかがだったでしょうか。
僕自身はもっと、韓国を知らねばならぬと反省しました。
ていうか、コリアン・フード・コラムニスト失格ですね。
おかげさまで貴重な体験をさせて頂きました。
ちなみにお店はコチラ。
タットリタン(鶏と野菜の辛い鍋)や、タッペクスク(丸鶏の水炊き)、
ヤンニョムチキン(辛口フライドチキン)などがおすすめの店です。
店名:四季の里
住所:東京都台東区花川戸1-2-7コーポ早川1階
電話:03-3842-9229
営業:11:00~14:30、17:00~23:00
定休:月曜日
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1278.html
店名:四季の里2号店
住所:東京都台東区東上野2-15-6
電話:03-3837-0399
営業:11:00~15:00、17:00~23:00
定休:月曜日
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1328.html

そして、直近のお知らせも一緒に掲載します。
2月18日(土)に開催する韓食ナラのスピンオフ企画、
第2回「マッコリの会」の詳細がようやく固まってきました。
料理を作らず、いろいろなマッコリを集めてわいわい、
というのがこの会の基本ですが、そこに今回は……。
「フレーバー系マッコリの逆襲!」
というテーマを設定したいと思います。
まあ、「逆襲」というのは僕の勝手な感覚なのですが、
2012年のマッコリ市場は、フレーバー系が話題の中心にあるかなと。
もともと、マッコリブームは黒豆のヒットが大きかったこともあり、
フレーバー系の活躍が下地となって、作られてきた経緯があります。
最近は生マッコリの普及にも押されて、やや印象が薄かったのですが、
昨年あたりから市場が広がって、また新たな魅力が出てきました。
大手メーカーの商品から、日本酒の酒造が地域性を活かしたものまで、
いろいろ集めて、フレーバー系の可能性を再発見するのが狙いです。
「マッコリ好きが飲んでうまいフレーバーはこれだ!」
というような、感じになったらいいなぁと。
とはいえ、基本的にはゆるい感じで進行していきますので、
気軽に飲んだくれる気持ちでお越し頂ければと思います。
なお、スピンオフなので、韓食ナラ定番のお土産はありませんが、
景品の当たる抽選会か、それに類するイベントを計画中です。
=========================
★第2回「マッコリの会」
~八田・本田の楽しい韓食ナラ スピンオフ企画~
■日時:2012年2月18日(土)15時~17時 受付:14時45分
■場所:イドンカルビ
■会費:4000円
■主催:ケーテレコム株式会社
【会場】
店名:イドンカルビ
住所:東京都新宿区新宿5-12-2
電話:03-3351-2057
最寄:新宿3丁目駅、東新宿駅より徒歩5分
http://r.tabelog.com/tokyo/A1304/A130402/13035516/
【参加申込み】
参加される方の住所・氏名・電話番号・メールアドレスまたは
ファックス番号を下記にメールしていただくか、お電話ください。
Mail: krisk1@k-telecom.co.jp
TEL : 03-6435-0899
参加費は下記口座まで事前にお振り込みください。
当日受付でのお支払いも可能ですが、参加応募多数の場合は
事前振込みをさせて頂いた方を、優先させていただきますので
あらかじめご了承下さい。
三菱東京UFJ銀行 目黒支店
普通 3819031 口座名:ケーテレコム (カ)
=========================

そして、もうひとつ。
大阪から魅力的なイベントのお知らせが届きました。
お世話になっているお店のママさんが、ご自身の出身地である、
済州島の食材を集め、「済州島料理を食べる会」を催すとのこと。
ちなみに、コチラのお店なのですが……。
桃谷(大阪)「どゃ」でテジカルビ&済州島料理。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1225.html
asahi.com/コリアうめーや!!(済州島のテールスープ)
http://www.asahi.com/international/korea/TKY201110310201.html
レギュラーメニューにも済州島料理が並んでいるお店。
そこからさらに特別なイベントということですから、
おそらく珍しいものが食べられるのではないかと思います。
時期的なこともあり、僕は大阪まで飛んで行けないので、
近くにお住まいの方は、かわりに楽しんでください。
=========================
<済州島を食べる>
日程:2012年2月25日(土)19時~
場所:どゃ
会費:5000円
備考:レアなマッコリ、焼酎等は飲み放題
<申し込み>
17時以降、お店に直接ご連絡ください。
<会場>
店名:どゃ
住所:大阪府大阪市生野区勝山南2-8-7
電話:06-7890-9100
営業:17:00~23:00
定休:火曜日
http://doya-tejikarubi.com/
※詳細についてはお店にご確認ください。
=========================
というところでお知らせも以上。
いつもだったらお知らせはお知らせで分割するのですが、
なかなかブログを書く時間が取れないので苦肉の策。
生活が落ち着いてくるまで、もうしばらくご容赦ください。
コリアうめーや!!第262号
<ごあいさつ>
2月になりました。
今年の冬はずいぶん本格的な寒さです。
外に出るだけで、指先から耳までかじかむ感じ。
僕の住む東京など、北国に比べればマシなのですが、
寒さに対する備えがないぶん厳しい気もします。
韓国のようにオンドルがあればいいんですけどね。
短パン、Tシャツで暮らせる韓国の室内を、
日本の住宅にも持ち込めないものでしょうか。
さて、そんなことをぼやきつつ。
今号のテーマでは季節と向き合ってみます。
僕にとってこの2月というのは特別な月。
しかもこれが喜ばしい意味での特別ではなく、
寒さと同様、悩ましいほうの特別なのです。
コリアうめーや!!第262号。
カレンダーを睨みつけて、スタートです。
<韓国料理と2月の苦しい関係!!>
今日から2月である。
新年にかけたカレンダーの1枚目を、
ビリビリと破って、また新たな月が始まる。
正月がずいぶん遠くなったな、という気分もあれば、
もう12分の1が過ぎ去ったかとの驚きもある。
だが、個人的な感想をいうならば、
「ああ、また憂鬱な2月が来てしまったか」
というのが本音だったりする。
よく2月と8月は「ニッパチ」と呼ばれ、
商売が低調で景気の悪い月とされる。
正月、お盆で出費がかさんだ反動ともいわれるし、
暑さ、寒さで外出が減るからともいわれる。
僕はライターなので商売人とは違うのだが、
不思議なことに、僕らもニッパチの影響がある。
ライターの仕事は月単位の締切が多いため、
そもそもの日数が少ない2月は忙しさが増す。
今年は閏年で1日多いからまだよいが、
30~31日でこなす仕事が28日に減るのは厳しい。
また、8月は編集者さんの夏休みで影響を受ける。
1月の正月休み、5月の連休はみな同時に休むが、
不思議なことに夏休みは前後するのが一般的。
日本人にとって「お盆」の習慣が希薄になったためか、
会社によっては9月、10月の夏休みも珍しくない。
すると僕らフリーライターの立場から見ると、
・A社の編集者さんが8月中旬に夏休み
・B社の編集者さんが8月下旬に夏休み
・C社の編集者さんが9月上旬に夏休み
・印刷会社はお盆がまるまる休み
といった感じで、みな休みが異なったりする。
当然、休み前には仕事が前倒されたりするので、
普段とは違った締切がぐちゃぐちゃに設定される。
これに加えて自分の夏休みもあったりすると、
8月は目も当てられない修羅場となる。
仕事の総量はまったく変わっていないのに、
日程的な制限で苦しむのがライターのニッパチだ。
しかし、憂鬱な2月というのはそれだけではない。
ライターとしての2月が厳しいことに加え、
コリアン・フード・コラムニストとしての2月もある。
韓国の2月というのは、どうも目立った料理がなく、
うまいこと季節を絡めた原稿を書きにくい。
冬はもう終わりかけだし、春の話題にはまだ早い。
旧正月が2月にずれ込んで季節の話題になることもあるが、
今年のように1月の旧正月だと目も当てられない。
2月らしい話を書こう、と思ってもネタがないのだ。
例えば、こんな感じで仕事を頂くとする。
「月に1度、季節の韓国料理を紹介してください」
「スタートは年度初め4月号からになります」
「まずはどんな料理がありますでしょう?」
すると、僕は当面の料理をピックアップし、
その編集者さんに月ごとの候補として投げ返す。
<4月>
・チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺)
4月14日は「ブラックデー」と呼ばれ、
恋人のいない男女がジャージャー麺を食べる日。
<5月>
・カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)
4月下旬から5月にかけてワタリガニが旬を迎える。
生のまま醤油漬けにした料理が一般的。
<6月>
・マッコリとチヂミ
チヂミを焼く音は、雨音に似ているといわれる。
雨の日にはチヂミを焼き、マッコリを飲む習慣がある。
この後は、7月のサムゲタン(ひな鶏のスープ)、
8月のパッピンス(カキ氷)といった感じで続いていく。
ある程度、先が見えたところで、
「いいですね、これでいきましょう!」
ということになって仕事は始まる。
秋冬までは、まずまず順当に進んでいくのだが、
終わり間際ではたと困るのが2月の存在だ。
最終回のひとつ前という位置付けで、
いわばクライマックスのような場面である。
盛り上げるだけ盛り上げたいところだが、
それに匹敵する料理が何もない。
2月に何を書くかはけっこうな難問なのだ。
まず考えるのが歳時記とイベントデーだ。
旧正月は季節感からも1月に回すことが多いので、
その後にやってくる、別の何かから考える必要がある。
候補としては、こんな感じである。
・ヤッパプ(黒砂糖を入れた甘いおこわ)
上元(旧暦1月15日)に作る習慣がある。
新羅の王様がカラスに命を救われた逸話に由来。
・インサム(高麗人参)
数字の「2・3(イ・サム)」に似ているので、
2月3日はインサムデー(高麗人参の日)。
・テンジャン(味噌)
味噌作りは旧暦1月頃の「午の日」が最適。
韓国では鬼神のいない吉日と考えられる。
いずれも小ネタとするには申し分ないのだが、
年間を通して考えると、やや地味過ぎる感がある。
秋夕のソンピョン(松葉餅)なら韓国人みなが食べるが、
上元にヤッパプを食べる人はそう多くないだろう。
むしろ、上元の日は年が明けて最初の満月なので、
歳時記などを調べると縁起食がけっこうある。
五穀飯や干し野菜のナムルを食べると夏負けせず、
クルミや松の実を食べると皮膚病にかからない。
早朝に清酒を1杯飲むと耳がよくなるなど、
いずれも地味ながら、まとめてみると存在感はある。
なので、企画によっては上元の話題を採用するが、
地味なものをまとめて、地味さに拍車がかかる気もする。
2月の中では、もっとも有力候補なのだが、
ほかに何かないかとは2月のたびに思うことだ。
高麗人参のほうも、それ自信の知名度は高いものの、
インサムデーを2月23日とする説もあってはっきりしない。
4月14日のブラックデーにぐらい有名ならまだしも、
近年に作られたイベントデーは記事としても弱い。
テンジャンは実際、過去にも記事にしたのだが、
これも話としては、ややマニアックに過ぎる。
もっと晴れやかな2月の話題はないものか。
次に考えられるのは旬の存在である。
冬の終わりで、春には早い半端な時期ではあるが、
探せば2月がベストという旬の素材はあるかもしれない。
この機会にあれこれ調べてみたところ、ひとつ素材として、
2月に行われる特産品関連の祭りを見つけた。
主産地でその時期に祭りが開催されているとなれば、
それは2月を旬とする味覚といえないこともない。
手元の資料から発見したのは以下の3つである。
・高城スケトウダラ祭り(2月下旬)
・龍垈里ファンテ(干しスケトウダラ)祭り(2月下旬)
・蔚珍ズワイガニ祭り(2月下旬)
スケトウダラ、ズワイガニはいずれも冬が旬で、
普段なら2月に限定できないが、祭りがあるなら話は別。
「ここに可能性を見いだせれば!」
と思ってさらにネットで詳細を調べたところ、
見つかったばかりの希望は、すぐに色あせていった。
高城スケトウダラ祭りは昨年11月に早々と開催。
龍垈里ファンテ祭りも昨年は5月に開催と大幅変更。
僕が資料とした本の時点では2月だったのだろうが、
必ずしも毎年2月にということではないようだ。
韓国のこうした祭りは毎年日程がコロコロ変わり、
しかも開催日がギリギリまで決まらないのが常。
こんな情報をもとに、2月の料理を語るのは危険だ。
一方、蔚珍ズワイガニ祭りは昨年も2月開催だったが、
こちらはもっと有名な盈徳という地域の祭りが3月だった。
盈徳ズワイガニ祭りが3月に開催されるのを無視し、
2月がシーズンだとズワイガニを語ることはできない。
祭りを根拠とする策は、あっという間についえた。
すると、残る手段は「ネタに走る」ぐらいだが、
これはほとんど禁じ手ともいえる最終手段だ。
例えば、日本で2月3日の節分に食べる恵方巻き。
韓国に同様の習慣がある訳でもなんでもないが、
よく似た見た目のキムパプ(海苔巻き)が韓国にはある。
そのあたりから話をうまく持っていって……。
=========================
日本の韓国ファンは「恵方巻き」を韓国式に食べる。
キムパプという韓国式の海苔巻きを韓国料理店で購入し、
あるいは自作をし「恵方キムパプ」として味わうのだ。
日本で生まれた韓国料理の新習慣といえよう。
=========================
といった記事に仕上げるのはどうか。
そんなことを思いつつネットで検索してみると、
「恵方キムパプ」のトップは僕のブログ「韓食日記」だった。
これではネタどころか、ただの自作自演である。
かくしてメルマガ1本を丸ごと費やしたのに、
2月に書くべき、韓国料理の素材は見つからなかった。
ああ、今日から悩ましい2月が始まる。
誰か僕に、2月向けのいいアイデアをください。
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
韓国で恵方巻きを流行らせる方法を大募集。
2月3日をキムパプの日にしましょう。
コリアうめーや!!第262号
2012年2月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
メールマガジン購読・解除用ページ
http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669
<ごあいさつ>
2月になりました。
今年の冬はずいぶん本格的な寒さです。
外に出るだけで、指先から耳までかじかむ感じ。
僕の住む東京など、北国に比べればマシなのですが、
寒さに対する備えがないぶん厳しい気もします。
韓国のようにオンドルがあればいいんですけどね。
短パン、Tシャツで暮らせる韓国の室内を、
日本の住宅にも持ち込めないものでしょうか。
さて、そんなことをぼやきつつ。
今号のテーマでは季節と向き合ってみます。
僕にとってこの2月というのは特別な月。
しかもこれが喜ばしい意味での特別ではなく、
寒さと同様、悩ましいほうの特別なのです。
コリアうめーや!!第262号。
カレンダーを睨みつけて、スタートです。
<韓国料理と2月の苦しい関係!!>
今日から2月である。
新年にかけたカレンダーの1枚目を、
ビリビリと破って、また新たな月が始まる。
正月がずいぶん遠くなったな、という気分もあれば、
もう12分の1が過ぎ去ったかとの驚きもある。
だが、個人的な感想をいうならば、
「ああ、また憂鬱な2月が来てしまったか」
というのが本音だったりする。
よく2月と8月は「ニッパチ」と呼ばれ、
商売が低調で景気の悪い月とされる。
正月、お盆で出費がかさんだ反動ともいわれるし、
暑さ、寒さで外出が減るからともいわれる。
僕はライターなので商売人とは違うのだが、
不思議なことに、僕らもニッパチの影響がある。
ライターの仕事は月単位の締切が多いため、
そもそもの日数が少ない2月は忙しさが増す。
今年は閏年で1日多いからまだよいが、
30~31日でこなす仕事が28日に減るのは厳しい。
また、8月は編集者さんの夏休みで影響を受ける。
1月の正月休み、5月の連休はみな同時に休むが、
不思議なことに夏休みは前後するのが一般的。
日本人にとって「お盆」の習慣が希薄になったためか、
会社によっては9月、10月の夏休みも珍しくない。
すると僕らフリーライターの立場から見ると、
・A社の編集者さんが8月中旬に夏休み
・B社の編集者さんが8月下旬に夏休み
・C社の編集者さんが9月上旬に夏休み
・印刷会社はお盆がまるまる休み
といった感じで、みな休みが異なったりする。
当然、休み前には仕事が前倒されたりするので、
普段とは違った締切がぐちゃぐちゃに設定される。
これに加えて自分の夏休みもあったりすると、
8月は目も当てられない修羅場となる。
仕事の総量はまったく変わっていないのに、
日程的な制限で苦しむのがライターのニッパチだ。
しかし、憂鬱な2月というのはそれだけではない。
ライターとしての2月が厳しいことに加え、
コリアン・フード・コラムニストとしての2月もある。
韓国の2月というのは、どうも目立った料理がなく、
うまいこと季節を絡めた原稿を書きにくい。
冬はもう終わりかけだし、春の話題にはまだ早い。
旧正月が2月にずれ込んで季節の話題になることもあるが、
今年のように1月の旧正月だと目も当てられない。
2月らしい話を書こう、と思ってもネタがないのだ。
例えば、こんな感じで仕事を頂くとする。
「月に1度、季節の韓国料理を紹介してください」
「スタートは年度初め4月号からになります」
「まずはどんな料理がありますでしょう?」
すると、僕は当面の料理をピックアップし、
その編集者さんに月ごとの候補として投げ返す。
<4月>
・チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺)
4月14日は「ブラックデー」と呼ばれ、
恋人のいない男女がジャージャー麺を食べる日。
<5月>
・カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)
4月下旬から5月にかけてワタリガニが旬を迎える。
生のまま醤油漬けにした料理が一般的。
<6月>
・マッコリとチヂミ
チヂミを焼く音は、雨音に似ているといわれる。
雨の日にはチヂミを焼き、マッコリを飲む習慣がある。
この後は、7月のサムゲタン(ひな鶏のスープ)、
8月のパッピンス(カキ氷)といった感じで続いていく。
ある程度、先が見えたところで、
「いいですね、これでいきましょう!」
ということになって仕事は始まる。
秋冬までは、まずまず順当に進んでいくのだが、
終わり間際ではたと困るのが2月の存在だ。
最終回のひとつ前という位置付けで、
いわばクライマックスのような場面である。
盛り上げるだけ盛り上げたいところだが、
それに匹敵する料理が何もない。
2月に何を書くかはけっこうな難問なのだ。
まず考えるのが歳時記とイベントデーだ。
旧正月は季節感からも1月に回すことが多いので、
その後にやってくる、別の何かから考える必要がある。
候補としては、こんな感じである。
・ヤッパプ(黒砂糖を入れた甘いおこわ)
上元(旧暦1月15日)に作る習慣がある。
新羅の王様がカラスに命を救われた逸話に由来。
・インサム(高麗人参)
数字の「2・3(イ・サム)」に似ているので、
2月3日はインサムデー(高麗人参の日)。
・テンジャン(味噌)
味噌作りは旧暦1月頃の「午の日」が最適。
韓国では鬼神のいない吉日と考えられる。
いずれも小ネタとするには申し分ないのだが、
年間を通して考えると、やや地味過ぎる感がある。
秋夕のソンピョン(松葉餅)なら韓国人みなが食べるが、
上元にヤッパプを食べる人はそう多くないだろう。
むしろ、上元の日は年が明けて最初の満月なので、
歳時記などを調べると縁起食がけっこうある。
五穀飯や干し野菜のナムルを食べると夏負けせず、
クルミや松の実を食べると皮膚病にかからない。
早朝に清酒を1杯飲むと耳がよくなるなど、
いずれも地味ながら、まとめてみると存在感はある。
なので、企画によっては上元の話題を採用するが、
地味なものをまとめて、地味さに拍車がかかる気もする。
2月の中では、もっとも有力候補なのだが、
ほかに何かないかとは2月のたびに思うことだ。
高麗人参のほうも、それ自信の知名度は高いものの、
インサムデーを2月23日とする説もあってはっきりしない。
4月14日のブラックデーにぐらい有名ならまだしも、
近年に作られたイベントデーは記事としても弱い。
テンジャンは実際、過去にも記事にしたのだが、
これも話としては、ややマニアックに過ぎる。
もっと晴れやかな2月の話題はないものか。
次に考えられるのは旬の存在である。
冬の終わりで、春には早い半端な時期ではあるが、
探せば2月がベストという旬の素材はあるかもしれない。
この機会にあれこれ調べてみたところ、ひとつ素材として、
2月に行われる特産品関連の祭りを見つけた。
主産地でその時期に祭りが開催されているとなれば、
それは2月を旬とする味覚といえないこともない。
手元の資料から発見したのは以下の3つである。
・高城スケトウダラ祭り(2月下旬)
・龍垈里ファンテ(干しスケトウダラ)祭り(2月下旬)
・蔚珍ズワイガニ祭り(2月下旬)
スケトウダラ、ズワイガニはいずれも冬が旬で、
普段なら2月に限定できないが、祭りがあるなら話は別。
「ここに可能性を見いだせれば!」
と思ってさらにネットで詳細を調べたところ、
見つかったばかりの希望は、すぐに色あせていった。
高城スケトウダラ祭りは昨年11月に早々と開催。
龍垈里ファンテ祭りも昨年は5月に開催と大幅変更。
僕が資料とした本の時点では2月だったのだろうが、
必ずしも毎年2月にということではないようだ。
韓国のこうした祭りは毎年日程がコロコロ変わり、
しかも開催日がギリギリまで決まらないのが常。
こんな情報をもとに、2月の料理を語るのは危険だ。
一方、蔚珍ズワイガニ祭りは昨年も2月開催だったが、
こちらはもっと有名な盈徳という地域の祭りが3月だった。
盈徳ズワイガニ祭りが3月に開催されるのを無視し、
2月がシーズンだとズワイガニを語ることはできない。
祭りを根拠とする策は、あっという間についえた。
すると、残る手段は「ネタに走る」ぐらいだが、
これはほとんど禁じ手ともいえる最終手段だ。
例えば、日本で2月3日の節分に食べる恵方巻き。
韓国に同様の習慣がある訳でもなんでもないが、
よく似た見た目のキムパプ(海苔巻き)が韓国にはある。
そのあたりから話をうまく持っていって……。
=========================
日本の韓国ファンは「恵方巻き」を韓国式に食べる。
キムパプという韓国式の海苔巻きを韓国料理店で購入し、
あるいは自作をし「恵方キムパプ」として味わうのだ。
日本で生まれた韓国料理の新習慣といえよう。
=========================
といった記事に仕上げるのはどうか。
そんなことを思いつつネットで検索してみると、
「恵方キムパプ」のトップは僕のブログ「韓食日記」だった。
これではネタどころか、ただの自作自演である。
かくしてメルマガ1本を丸ごと費やしたのに、
2月に書くべき、韓国料理の素材は見つからなかった。
ああ、今日から悩ましい2月が始まる。
誰か僕に、2月向けのいいアイデアをください。
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
韓国で恵方巻きを流行らせる方法を大募集。
2月3日をキムパプの日にしましょう。
コリアうめーや!!第262号
2012年2月1日
発行人 八田 靖史
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