コリアうめーや!!第291号
<ごあいさつ>
4月15日になりました。
12日間の韓国出張から戻ってきて、
ちょっと呆然とした日々を過ごしています。
情報の整理と、溜まった仕事にてんてこ舞い。
美味しかった料理の数々を反芻しつつ、
妄想と現実のはざまで身悶える毎日です。
今回の出張では美味しい料理はもちろんのこと、
たくさんの美味しい食材とも出会えました。
アワビ、フグ、カニ、韓牛などを食べ尽くす、
稀なる贅沢旅だったことを告白します。
今号で取り上げるのは東海岸のズワイガニ。
念願という言葉では語り尽くせないほど、
思いの詰まった宿題をようやく解決しました。
コリアうめーや!!第291号。
東の聖地へと赴く、スタートです。
<東海岸ズワイガニと僕の10年史!!>
振り返ると、あれは2002年秋。
僕は慶州(キョンジュ)取材に同行し、
東海岸の奉吉(ポンギル)まで足を伸ばした。
予定されていた取材対象は、
・文武大王陵(ムンムデワンヌン)
・感恩寺(カムンサ)
というふたつの歴史スポットである。
前者の文武大王とは新羅の30代国王で、
高句麗、唐と戦って朝鮮半島を統一した人物。
その陵墓が東海岸沿いの海中にある。
後者の感恩寺は文武大王陵付近にある寺院跡。
文武大王が統一後に護国を祈願して建設したもので、
新羅時代の美しい三層石塔が残っている。
いずれも歴史マニア垂涎のスポットだが、
僕がむしろヨダレをたらしたのは海産物グルメ。
取材もそこそこに浜辺の刺身店へと突撃し、
カレイの刺身とスチームのズワイガニに舌鼓を打った。
そのレポート記事が今もしっかり残っている。
慶州のおすすめコース第3弾~東海岸かに紀行
http://www.pusannavi.com/special/5003700
モノ好きな人は全文を読んで頂ければよいが、
昔の拙い記事なので、以下に要旨をまとめておこう。
・東海岸でズワイガニを食べる
・ズワイガニの名産地はもう少し北の盈徳(ヨンドク)
・近隣なので盈徳産を期待したが、実際はロシア産ばかり
・盈徳産は近年漁獲量が少なく値段が急騰
・盈徳産は諦め、ロシア産のズワイガニを賞味
東海岸まで行って有名な盈徳産に出会えず、
僕は記事内で、
「ロシア産のズワイガニ最高!」
と叫んだ。
もちろん食べて美味しかったのは事実だが、
盈徳産を知らずして、その最高は空虚な遠吠えに過ぎない。
いつかは盈徳でズワイガニを食べてやる。
盈徳産への強い憧れがその時点で生まれた。
だが、なかなかその縁は結ばれなかった。
いつかは盈徳産と心に誓いつつ機会を待ったが、
高級食材であることに加え、季節が冬場に限定される。
おまけに盈徳自体もかなり不便な土地柄なので、
気軽にほいほい行くようなところでもない。
誓ったはいいものの、なかなか機会は訪れず、
むしろ西海岸の絶品ワタリガニと戯れたりしていた。
中西部の港町、群山(クンサン)で食べた、
とろとろのカンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)。
仁川(インチョン)の松島(ソンド)地区で食べた、
卵みっちりの贅沢コッケタン(ワタリガニ鍋)。
「西海岸のワタリガニ最高!」
と満面の笑顔で語ったりもしていたが、
そのときも密かに盈徳産のズワイガニが気になっていた。
韓国ではよく、
「東のズワイガニ、西のワタリガニ」
といった表現を用いる。
東の正横綱を知らずして西の横綱を褒めてよいものか。
そんな思いが、いつも心に引っかかっていた。
あるいは焦りのようなものもあったかもしれない。
先日、盈徳よりもはるか北の江原道を巡った際、
同じく東海岸沿いでズワイガニを食べたが大失敗だった。
慶州のときと同様に、ロシア産ということだったが、
身は水っぽく、カニミソもひどい味だった。
これはやはり早いうちに盈徳へ行かねば。
そう思っていた僕にとって今回の出張こそが、
またとない機会となったのである。
僕の出張期間が3月21日~4月1日。
盈徳のズワイガニ祭りが3月28日~4月1日。
なんと後半部分で丸ごと重なっている。
「これは行くしかない!」
ソウル在住の友人2名に声をかけ、
辺境の聖地、盈徳を目指した。
この時点で下調べしていたのはこんな情報。
・ズワイガニ祭りの開催地は江口(カング)港
・江口港にはズワイガニの専門店が集まっている
・ズワイガニは専門店でも市場でも食べられる
・値段はサイズ、産地などによってかなり異なる
・盈徳でも盈徳産は希少で、ロシア産が多く流通する
・盈徳産には産地を証明するタグがついている
重要なのは産地の見極めと価格の相場だろう。
ある程度、大枚をはたく気持ちの準備はできていたが、
それでも無尽蔵の資金がある訳ではない。
しかも調べた情報にはこんなものもあった。
・ぼったくりの被害は現地でも少なからずある
・盈徳産もピンキリで質の落ちたものもある
名前だけの盈徳産に引っかかるのはごめんだ。
ただ、うまいこと立ちまわるのであれば、
・傷モノの盈徳産を格安で食べることも可能
という情報もあった。
盈徳産は足が1本落ちるだけで二束三文になるため、
それをあえて狙っていく通もいるらしい。
心ひかれる情報ではあったがビギナーにはやや難度が高い。
信頼のおけるナビゲーターでもいれば話は別だが、
とりあえず安全な方法で盈徳産を目指すことにした。
事前にピックアップしていた専門店を、
地元のタクシー運転手に伝えて評判を確認。
このとき客観的な情報を得るのに少しの話術がいるが、
なんとか信頼できそうな店を決めることができた。
それが「サゲジョルテゲ直販場」という大型店。
運も味方したのか、ちょうど僕らの食事中に……。
第16回盈徳ズワイガニ祭り
2013年慶尚北道ズワイガニ料理優秀飲食店選抜大会
金賞受賞!
との一報が飛び込むサプライズもあった。
どうやらその年の最優秀店を見つけることに、
期せずして成功した模様であった。
店を決めてからは、いけすを見つめて相談。
ひとつひとつ店の人に値段を確認すると、
だいたいこんな感じの選択肢があるようだった。
・盈徳産(大)→20万ウォン超
・盈徳産(小)→7万ウォン程度
・羅津産(大)→8万ウォン程度
(レートは1万ウォン=約893円)
いちばん下の羅津(ラジン)は北朝鮮の地名だが、
ロシア経由で輸入されるため扱いはロシア産と同じである。
また、これに加えてベニズワイガニなどの用意もあり、
人数と食欲に照らし合わせて複合的な注文も可能だ。
僕らはひとしきり悩んだ後……。
「盈徳産の小と羅津産の大を1杯ずつ!」
ということで都合15万ウォン分を注文。
これに鍋とカニミソの炒めごはんがセットでつくので、
3人で食べる量としてはそれなりに充分だった。
なお、食べての感想はブログでも速報を書いたが、
食べごたえで羅津産、味は甘味の濃さで盈徳産に軍配。
カニミソは圧倒的な差で盈徳産が美味しかった。
出張報告(9)盈徳ズワイガニ祭りでカニ三昧。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1513.html
両方のカニミソを味見したところ違いが顕著だったので、
羅津産だけを炒めごはんにしてもらったのが大正解。
盈徳産のほうはチビチビ焼酎のつまみで楽しんだ。
この感じだと、おそらく20万ウォン超の盈徳産(大)は、
食べごたえでも、カニミソの味でも群を抜くのだろう。
ただ、20万ウォンというと日本円で1万8000円近く。
ビビらず注文するには、まだ時間が必要だと思われる。
「盈徳産のズワイガニ最高!」
というセリフをいまはまだぐっと飲み込んで、
いずれの機会までもう少し待とうと思う。
盈徳のズワイガニは韓国でも指折りの成り金食材。
金に糸目をつけず、というのはあまりいい趣味でないが、
20代、30代の自分に照らして向き合うのも面白い。
果たしてそんな日が本当に来るかはわからないが、
いつの日か、
「盈徳産のいちばんいいヤツを持ってこい!」
と胸を張って注文したいものだ。
東海岸ズワイガニと僕の10年史。
今後20年史、30年史と歴史を重ねることで、
さらに付き合いを深めていきたいと思う。
いずれ機会があるものなら。
「20万ウォン持って現地集合!」
というオフ会でも開催したいところ。
来年のズワイガニ祭りではまだちょっと早いので、
キリのいいところで2017年はどうだろう。
「第20回ズワイガニ祭りに20万ウォン持参で臨むオフ会」
懐に余裕のある参加者をじっくり募集したい。
<店舗情報>
店名:サゲジョルテゲ直販場
住所:慶尚北道盈徳郡江口面江口里256-61
電話:054-734-2777
<お知らせ>
3月21日(木)に新刊が発売になりました。
タイトルは「韓国料理には、ご用心!」。
版元は三五館、定価は1260円(税込)。
ここ10年ほどの日本における韓国料理事情を、
ギュッとまとめて整理をしたという内容です。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1503.html
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
盈徳でも怪しげな盈徳産がけっこうありました。
素人目線ではタグの確認がいちばん無難そうです。
コリアうめーや!!第291号
2013年4月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
メールマガジン購読・解除用ページ
http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669
<ごあいさつ>
4月15日になりました。
12日間の韓国出張から戻ってきて、
ちょっと呆然とした日々を過ごしています。
情報の整理と、溜まった仕事にてんてこ舞い。
美味しかった料理の数々を反芻しつつ、
妄想と現実のはざまで身悶える毎日です。
今回の出張では美味しい料理はもちろんのこと、
たくさんの美味しい食材とも出会えました。
アワビ、フグ、カニ、韓牛などを食べ尽くす、
稀なる贅沢旅だったことを告白します。
今号で取り上げるのは東海岸のズワイガニ。
念願という言葉では語り尽くせないほど、
思いの詰まった宿題をようやく解決しました。
コリアうめーや!!第291号。
東の聖地へと赴く、スタートです。
<東海岸ズワイガニと僕の10年史!!>
振り返ると、あれは2002年秋。
僕は慶州(キョンジュ)取材に同行し、
東海岸の奉吉(ポンギル)まで足を伸ばした。
予定されていた取材対象は、
・文武大王陵(ムンムデワンヌン)
・感恩寺(カムンサ)
というふたつの歴史スポットである。
前者の文武大王とは新羅の30代国王で、
高句麗、唐と戦って朝鮮半島を統一した人物。
その陵墓が東海岸沿いの海中にある。
後者の感恩寺は文武大王陵付近にある寺院跡。
文武大王が統一後に護国を祈願して建設したもので、
新羅時代の美しい三層石塔が残っている。
いずれも歴史マニア垂涎のスポットだが、
僕がむしろヨダレをたらしたのは海産物グルメ。
取材もそこそこに浜辺の刺身店へと突撃し、
カレイの刺身とスチームのズワイガニに舌鼓を打った。
そのレポート記事が今もしっかり残っている。
慶州のおすすめコース第3弾~東海岸かに紀行
http://www.pusannavi.com/special/5003700
モノ好きな人は全文を読んで頂ければよいが、
昔の拙い記事なので、以下に要旨をまとめておこう。
・東海岸でズワイガニを食べる
・ズワイガニの名産地はもう少し北の盈徳(ヨンドク)
・近隣なので盈徳産を期待したが、実際はロシア産ばかり
・盈徳産は近年漁獲量が少なく値段が急騰
・盈徳産は諦め、ロシア産のズワイガニを賞味
東海岸まで行って有名な盈徳産に出会えず、
僕は記事内で、
「ロシア産のズワイガニ最高!」
と叫んだ。
もちろん食べて美味しかったのは事実だが、
盈徳産を知らずして、その最高は空虚な遠吠えに過ぎない。
いつかは盈徳でズワイガニを食べてやる。
盈徳産への強い憧れがその時点で生まれた。
だが、なかなかその縁は結ばれなかった。
いつかは盈徳産と心に誓いつつ機会を待ったが、
高級食材であることに加え、季節が冬場に限定される。
おまけに盈徳自体もかなり不便な土地柄なので、
気軽にほいほい行くようなところでもない。
誓ったはいいものの、なかなか機会は訪れず、
むしろ西海岸の絶品ワタリガニと戯れたりしていた。
中西部の港町、群山(クンサン)で食べた、
とろとろのカンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)。
仁川(インチョン)の松島(ソンド)地区で食べた、
卵みっちりの贅沢コッケタン(ワタリガニ鍋)。
「西海岸のワタリガニ最高!」
と満面の笑顔で語ったりもしていたが、
そのときも密かに盈徳産のズワイガニが気になっていた。
韓国ではよく、
「東のズワイガニ、西のワタリガニ」
といった表現を用いる。
東の正横綱を知らずして西の横綱を褒めてよいものか。
そんな思いが、いつも心に引っかかっていた。
あるいは焦りのようなものもあったかもしれない。
先日、盈徳よりもはるか北の江原道を巡った際、
同じく東海岸沿いでズワイガニを食べたが大失敗だった。
慶州のときと同様に、ロシア産ということだったが、
身は水っぽく、カニミソもひどい味だった。
これはやはり早いうちに盈徳へ行かねば。
そう思っていた僕にとって今回の出張こそが、
またとない機会となったのである。
僕の出張期間が3月21日~4月1日。
盈徳のズワイガニ祭りが3月28日~4月1日。
なんと後半部分で丸ごと重なっている。
「これは行くしかない!」
ソウル在住の友人2名に声をかけ、
辺境の聖地、盈徳を目指した。
この時点で下調べしていたのはこんな情報。
・ズワイガニ祭りの開催地は江口(カング)港
・江口港にはズワイガニの専門店が集まっている
・ズワイガニは専門店でも市場でも食べられる
・値段はサイズ、産地などによってかなり異なる
・盈徳でも盈徳産は希少で、ロシア産が多く流通する
・盈徳産には産地を証明するタグがついている
重要なのは産地の見極めと価格の相場だろう。
ある程度、大枚をはたく気持ちの準備はできていたが、
それでも無尽蔵の資金がある訳ではない。
しかも調べた情報にはこんなものもあった。
・ぼったくりの被害は現地でも少なからずある
・盈徳産もピンキリで質の落ちたものもある
名前だけの盈徳産に引っかかるのはごめんだ。
ただ、うまいこと立ちまわるのであれば、
・傷モノの盈徳産を格安で食べることも可能
という情報もあった。
盈徳産は足が1本落ちるだけで二束三文になるため、
それをあえて狙っていく通もいるらしい。
心ひかれる情報ではあったがビギナーにはやや難度が高い。
信頼のおけるナビゲーターでもいれば話は別だが、
とりあえず安全な方法で盈徳産を目指すことにした。
事前にピックアップしていた専門店を、
地元のタクシー運転手に伝えて評判を確認。
このとき客観的な情報を得るのに少しの話術がいるが、
なんとか信頼できそうな店を決めることができた。
それが「サゲジョルテゲ直販場」という大型店。
運も味方したのか、ちょうど僕らの食事中に……。
第16回盈徳ズワイガニ祭り
2013年慶尚北道ズワイガニ料理優秀飲食店選抜大会
金賞受賞!
との一報が飛び込むサプライズもあった。
どうやらその年の最優秀店を見つけることに、
期せずして成功した模様であった。
店を決めてからは、いけすを見つめて相談。
ひとつひとつ店の人に値段を確認すると、
だいたいこんな感じの選択肢があるようだった。
・盈徳産(大)→20万ウォン超
・盈徳産(小)→7万ウォン程度
・羅津産(大)→8万ウォン程度
(レートは1万ウォン=約893円)
いちばん下の羅津(ラジン)は北朝鮮の地名だが、
ロシア経由で輸入されるため扱いはロシア産と同じである。
また、これに加えてベニズワイガニなどの用意もあり、
人数と食欲に照らし合わせて複合的な注文も可能だ。
僕らはひとしきり悩んだ後……。
「盈徳産の小と羅津産の大を1杯ずつ!」
ということで都合15万ウォン分を注文。
これに鍋とカニミソの炒めごはんがセットでつくので、
3人で食べる量としてはそれなりに充分だった。
なお、食べての感想はブログでも速報を書いたが、
食べごたえで羅津産、味は甘味の濃さで盈徳産に軍配。
カニミソは圧倒的な差で盈徳産が美味しかった。
出張報告(9)盈徳ズワイガニ祭りでカニ三昧。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1513.html
両方のカニミソを味見したところ違いが顕著だったので、
羅津産だけを炒めごはんにしてもらったのが大正解。
盈徳産のほうはチビチビ焼酎のつまみで楽しんだ。
この感じだと、おそらく20万ウォン超の盈徳産(大)は、
食べごたえでも、カニミソの味でも群を抜くのだろう。
ただ、20万ウォンというと日本円で1万8000円近く。
ビビらず注文するには、まだ時間が必要だと思われる。
「盈徳産のズワイガニ最高!」
というセリフをいまはまだぐっと飲み込んで、
いずれの機会までもう少し待とうと思う。
盈徳のズワイガニは韓国でも指折りの成り金食材。
金に糸目をつけず、というのはあまりいい趣味でないが、
20代、30代の自分に照らして向き合うのも面白い。
果たしてそんな日が本当に来るかはわからないが、
いつの日か、
「盈徳産のいちばんいいヤツを持ってこい!」
と胸を張って注文したいものだ。
東海岸ズワイガニと僕の10年史。
今後20年史、30年史と歴史を重ねることで、
さらに付き合いを深めていきたいと思う。
いずれ機会があるものなら。
「20万ウォン持って現地集合!」
というオフ会でも開催したいところ。
来年のズワイガニ祭りではまだちょっと早いので、
キリのいいところで2017年はどうだろう。
「第20回ズワイガニ祭りに20万ウォン持参で臨むオフ会」
懐に余裕のある参加者をじっくり募集したい。
<店舗情報>
店名:サゲジョルテゲ直販場
住所:慶尚北道盈徳郡江口面江口里256-61
電話:054-734-2777
<お知らせ>
3月21日(木)に新刊が発売になりました。
タイトルは「韓国料理には、ご用心!」。
版元は三五館、定価は1260円(税込)。
ここ10年ほどの日本における韓国料理事情を、
ギュッとまとめて整理をしたという内容です。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1503.html
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
盈徳でも怪しげな盈徳産がけっこうありました。
素人目線ではタグの確認がいちばん無難そうです。
コリアうめーや!!第291号
2013年4月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
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仕事柄、韓国料理関連のいろいろな会社にお邪魔し、
あれこれ話を伺ったり、こちらからお話したりもします。
そんなとき、帰り際に商品をお土産として頂くことがあるのですが、
まあ、どの会社も目一杯くれたりするんですよね。
スーパーで買ったらいくらになるんだろう、とも思いますが、
会社の人にとっては、これも宣伝の一環なのでしょう。
「もう、どうぞどうぞ、いくらでも!」
「いえいえ、こんなに食べきれませんから!」
というやり取りをすることが多々あります。

でも、キムチばっかりこんなにもらったのは初めてですね。
見ての通り、屋根のマークで有名な「宗家キムチ」ですが、
右下から時計回りで、75g、130g、400g、1.5kg入りの商品です。
スーパーでよく見かけるのは400gまでの商品でしょうが、
コストコあたりに行くと、1.5kgも購入できるそうです。

その中でも、いちばん有名なのは400gの商品でしょう。
コウケンテツさんがにっこり笑顔でオススメしています。
で、これらの商品がそれぞれどう違うかというと、
「まったく同じ!」
という話でした。
じゃあ、どれかひとつくれればいいのにとも思ったのですが、
その後に、
「まったく同じものを入れているのですが、それでも味は違うんです」
と続いたのが大きなポイント。
なんでも容量によって少しずつ味が変わってゆくのだとか。
カレーやおでんなどでも、たくさん作ると美味しいといいますが、
不思議なことに、キムチも大容量のほうが美味しいそうです。

じゃあ、確かめてみようって話ですよね。
いちばん差が出るであろう、75gと1.5kgを取り出して、
どれだけ味が違うのかを、実際に確かめてみました。
まあ、本当にびっくりしたのですが……。
「1.5kgのほうが圧倒的に瑞々しくて美味しい!」
というのが結論です。
なんていうか、味は確かに同じものなのですが、
大容量のほうは汁気が多く、そのぶん白菜のシャッキリ感も新鮮。
サイズによって、これだけ違うのかと驚きました。
なるほど、いろいろやってみるものですねぇ。
ちなみにこの合計2kg超のキムチは順調に消費され、
2週間ほどで、もう残りが半分以下になっております。
外食も多い我が家としては、かなりの速度ですね。

麺シリーズのほうも、昼食などで頂きました。
具は自前で載せたものですが、ムルレンミョン(汁冷麺)と……。

ピビムネンミョン(混ぜ冷麺)。

個人的なイチオシはチャジャンミョン(ジャージャー麺)でした。
生麺を使用しているので、食感がモチモチとしており、
ちょっとカタめに茹でることで、コシを楽しむことができます。
裏面の指示は3分30秒でしたが、2分30秒~3分程度でもいいぐらい。
また、味噌もほんのり甘めで、どろっと麺に絡むレトロ風。
ゴロゴロのジャガイモも含め、昔ながらのチャジャンミョンです。

最後は2種類のチーズを使ったトッポッキ(餅炒め)。
餅の中にチーズが埋め込んであるのに加え、
最後に上からかける粉チーズも用意されています。
うっすら緑色に見えているのはパセリの粉。
この上からかける粉チーズがずいぶんと効いており、
「トッポッキ用のふりかけ!」
というのがあってもいいな、と思いました。
たぶん何種類か作ると、普通のトッポッキが化けますね。
思いつくまま、
・バジルチーズ味!
・黒コショウチーズ味!
・ガーリックチーズ味!
などなど、バージョンはいくらでも作れそう。
トッポッキの新しい未来の一端が見えた気がしました。
なお、これらの商品を扱っているのは株式会社マルキュウ。
なんと20年以上も前から「宗家キムチ」を扱っており、
キムチを販売する会社としては指折りの老舗だそうです。
我が家から車で10分という意外なご近所でしたけどね。
たくさんのお土産をありがとうございました!

まず出てきたのがコチラの15皿。
韓国料理でいうパンチャン(無料の小皿料理)ではなく、
前菜としてのナムル15種と考えたようがよさそうです。
すなわち、これらをテーブルに並べながらメインの料理を待ち、
箸休めとして手を伸ばす、というものではありませんでした。
前菜としてひと通り楽しんだ後、次の料理が出てきます。
なお、15種のラインナップは以下の通り。
前列右から:クレソン、ナス、韓国カボチャ、ニンジン、豆苗
中列右から:ジャガイモ、カタクリ、金針菜、ワサビ、マコモダケ
後列右から:ホウレンソウ、大豆モヤシ、加賀太キュウリ、ミョウガ、ミツバ
お店の人の解説を必死に覚え、みんなで確認し合った後、
忘れないように携帯でメモをしたので、たぶん正確です。
このラインナップだけでも店の本気度が伝わってきますが、
実際に食べると、もうこの時点で幸せのため息が出ます。
全体に薄味なので、素材のよさがわかるんですよね。
これだけあると、ついつい珍しい素材に気を取られがちですが、
ホウレンソウの味が濃かったり、ニンジンの甘さに驚いたり。
ふと気付くとミョウガはうっすらと酸味が効いていたり。
「これひとつずつ作るの大変だろうなぁ」
なんて話をしながら、一同で感心しました。
一同といってもこの日の参加者は3人ですけどね。
大阪のグルメなヌナおふたりにご一緒頂きました。

続いて出てきたのはチヂミが2種。
手前がタケノコと木の芽で、奥がホタテとネギです。
チヂミは韓国料理の中でも季節感を表現しやすい料理ですが、
そこにセンスを感じさせるのは、やっぱり腕ですよねぇ。
タケノコに木の芽を加えて、和のテイストを演出しながら、
それでもタレにつけることで、最終的には韓国風に戻ります。
ホタテの甘味に、ネギの甘味という調和もいい感じでした。

衝撃を受けたアワビ粥。
さんざん済州島に行って、アワビ料理を食べ散らかして、
偉そうにアワビを語っておりましたが、これを食べてしまうと……。
「世界でいちばんうまいアワビ粥は大阪にあった!」
と思わざるをえません。
アワビ粥でありつつ、むしろリゾットに近い感じなのですが、
それはお店のシェフがイタリアン出身だからでしょうね。
肝と一緒に炒めたごはん部分もコクがあって美味しいですが、
別にソテーしたとおぼしきアワビがもう素晴らしいのなんの。

といったあたりで普通の韓国料理店でないのはわかると思いますが、
韓国料理を掲げつつも、いろいろな国のテイストが混ざっています。
どこまでが韓国料理かを面白悩むというスタイルは大好物ですね。
上の写真はハマグリとタケノコのスープ。
韓国料理で考えるならテハプタン(ハマグリのスープ)ですが、
そこにタケノコを入れたことで、ぐっと甘味が増しました。
んー、春らしさも全開ですよねぇ。

表面を焦がした牛肉はイチボの部分を使用。
その上にチヂミのタレで味付けをした焼きナスが載り、
ワイルドルッコラを覆いかぶせた一品です。
このへんでもう僕らは、どのあたりが韓国料理なのかを見失い、
お店の人に教えてもらいつつ、感心とともに酒がますます進む状態。
ビールから、上澄みを別途楽しませてくれるマッコリを経て、
白ワイン組と、日本酒(黒龍)組へと分かれました。

フカヒレのスープにホワイトアスパラとゼンマイ。
実はこの日、昼間に別のところでホワイトアスパラのパスタを食べ、
どうしたことか消し飛んだ風味に、ガクッと膝を折ったばかりでした。
ここでそのリベンジができたのは嬉しかったですねぇ。
ホワイトアスパラの爽やかな風味と、サクサク食感のゼンマイ。
それらを楽しみながら、フカヒレをずぞっ! といく幸せといったら。

メイン料理はカルビチム(牛カルビの蒸し煮)。
色合いが赤いので、大邱あたりの刺激的な味付けかと思いきや、
センソンジョリム(魚の煮付け)に似た甘味のある辛さでした。
写真ではちょっと見にくいですが、ナスと大根も盛り付けてあり、
これらが煮汁の旨味を吸って、抜群の味わいになっています。
牛カルビもとろっとろで……。

たまらなくごはんに合うんですよねぇ。
そんなごはんを手前に置きつつ、1名が箸で牛カルビをとらえ、
残るもう1名がスプーンで煮汁をすくっている。
そんな臨場感のあるひとコマを激写できたのは、
何より料理の魅力を伝えられたのではと、自画自賛しています。
もうみんな没頭という感じで料理を満喫しておりました。

箸休めはチンゲンサイのキムチと白菜キムチ。

デザートは草餅風のインジョルミ(キナコ餅)。
これだけ食べて、お酒も3人で思う存分に飲んで、
ひとり1万2000円という支払いは、決して高くなかったと思います。
こういういい店が大阪にあるというのはうらやましいですねぇ。
もう本気で移住しようかと思うほど、楽しませて頂きました。
ただ、仮に移住したとて、頻繁に足を運ぶのは難しい様子。
なにしろ人気店なので、数ヶ月先まで予約がぎっしりだそうです。
僕らの予約も2月上旬に連絡したのに、21時からでようやくなんとか。
ディナー営業のみで、全18席という規模もあるのでしょうが、
それ以上に、
「日本の韓国料理店として初めてミシュランで星を獲得!」
という栄誉も大きいように思います。
現在までミシュランで星を獲得した韓国料理店は……。
・DANJI(1つ星、ニューヨーク)
・ほうば(1つ星、大阪)
・モランボン神宮前(2つ星、東京)
・松の実(1つ星、東京)
・宮廷焼肉千の花(1つ星、東京) ※閉店
世界でもこの5軒のみ。
このうち「宮廷焼肉千の花」はもう閉店してしまったので、
現状、足を運べるのは4店舗だけということになります。
あと一応書いておくと、韓国にはまだ1軒もありません。
そもそもミシュランの韓国版自体がないですからね。
フランスでグリーンガイド(旅行ガイド)は出版されましたが、
レストランとホテルを紹介するレッドガイドは出ていません。
「韓食の世界化」を掲げる韓国にとってはひとつの悲願です。
まあ、ミシュラン掲載店というのを喜ぶまでもなく、
素晴らしい体験をさせて頂き、また学ぶことが多かったです。
興奮しつつも、仕事柄いろいろなことを考えさせられましたが、
できることなら頭をからっぽにしてもう1度行きたいですね。
この食材はなんだとか、韓国的な要素はどこだとか、
そういうのを一切抜きに、
「うまいっ!」
と身も心もとろけながら楽しみたいお店。
また大阪出張の機会があれば、早めの予約を入れたいと思います。
店名:ほうば
住所:大阪府大阪市北区天神橋5-3-10
電話:06-6353-0180
営業:17:00~23:00
定休:木曜日
コリアうめーや!!第290号
<ごあいさつ>
4月になりました。
本日まで韓国を出張していましたが、
幸運なことに各地で満開の桜を見られました。
ちょうど南から北上していくルートだったので、
桜前線とともに旅をしていた感じですね。
期せずしてなんとも風流な旅でしたが、
日程の大半は、花より団子。
おかげさまでたくさんの料理を食べ歩き、
今回も実り多き出張だったことを報告します。
あとはそれをしっかり書くだけ。
今号からしばらくは出張ネタが続きます。
コリアうめーや!!第290号。
どれにしようかなの、スタートです。
<プレミアムテンジャンの工場見学!!>
さて、どの話から書こうか。
3月21日から11泊12日の出張に出て、
久々に手持ちのネタがホクホクである。
序盤の済州島料理も新たな発見が多かったし、
中盤の慶尚道料理、終盤の京畿道料理も面白かった。
最後の最後で食べたソウルの料理も印象深い。
嬉しい悩みというところだが……。
うん、やっぱりコレだな。
今回の出張は前々回のメルマガで書いた……。
「あと来月浦項に来い。味噌仕込むから」
「え゛!?」
「取材していけ。メシぐらいおごるぞ」
「え、えーっと……」
という会話がきっかけのひとつ(下記参照)。
コリアうめーや!!第288号
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1500.html
前半は済州島のグルメツアーだったが、
後半のほとんどは慶尚道中心の取材となった。
もちろん今年、2013年が、
「釜山・蔚山・慶尚南道訪問の年!」
というのも大きな理由ではある。
それがために慶尚道の南部をあちこち巡ったが、
僕が呼び付けられた浦項(ポハン)は北部。
仮にテンジャン(味噌)取材がなかったとすると、
もっと時間をかけて南部をまわることもできた。
それをしなかったのは、ひとえに……。
韓国人を兄さんと呼ぶというのは、
「来い!」
「はい!」
という関係であるということ。
これを愚直に実践した1点に尽きる。
もらったテンジャンが美味しかったとか、
これまで浦項を訪れる機会がなかったとか。
あるいは、
「メシぐらいおごるぞ」
の部分に心がヒクヒクしたとか。
細かく見ていけば、理由はいろいろあるけれども、
「八田靖史は韓国的な義理を重んじる人物である!」
ということを証明するための出張だった。
うん、ウダウダ書かなくてもオレ偉いよね。
ということでテンジャン取材の話である。
前回からの繰り返しにもなるが、
プレミアムテンジャンの工場が浦項にある。
会社名、そしてブランドの名前が……。
「竹長然(チュッチャンヨン)」
これは竹長面(チュッチャンミョン)という、
工場を設立した地域の名前に由来している。
最後の「然」は社長の名前から取ったものであり、
また、テンジャンのキャッチコピーである……。
「自然と歳月以外は何も入れていません」
という部分にもかかっている。
竹長然を象徴する大きなキーワードとして、
「地元と自然」
という両者をまず抑えておきたい。
そして、その地元と自然のある地域だが、
浦項の中でも、かなりの山間部に位置する。
市街地からは車に乗って約1時間。
事前にある程度、田舎だとは話に聞いていたが、
その想像をもはるかに超えるド田舎であった。
嘘か本当かはわからないが、
「このへんの住人は朝鮮戦争を知らなかった!」
という話を現地で聞かされたほど。
ブラックジョークのたぐいだと思いたいが、
さもありなんという田舎ぶりだった。
つづら折りの山道をうんざりするほど走り、
廃校の角を曲がった、村のどんづまりが竹長然の工場。
一面、山しかない場所にようやくたどりついた。
迎えてくれたのは竹長然の社長である。
敷地内を巡りながら、原料や製法について話を伺う。
「主力商品はいうまでもなくテンジャンです」
「それとともにコチュジャンとカンジャン(醤油)」
「いずれも伝統製法にこだわっています」
「原材料の大豆や唐辛子はこの村で栽培したもの」
「ここは海抜450mの高冷地で良質の作物が育ちます」
「テンジャンの場合、原材料は大豆、塩、水のみです」
塩は全羅南道新安産の3年寝かせた天日塩。
水は敷地内の地下200mから汲み上げた岩盤水。
こだわりはあるが、素材としてはシンプルだ。
それを隣町、青松(チョンソン)の名人が作った、
伝統製法の甕に入れてじっくり熟成させる。
あとは時間と自然が極上の味に仕上げてくれる。
「ここには2000個の甕があります」
ということで甕の保管場所を見にいったが、
山間部にずらりと並ぶ光景はさすがに見事だった。
今後はそれを5000個まで増やすらしい。
併せて体験場やゲストハウスの建設も予定している。
また、地下貯蔵庫ではできたテンジャンを長期保存し、
ビンテージごとに販売する計画もあるという。
未来を語る社長の表情は、満面の笑顔であった。
一連の製造工程も見学させてもらったが、
機械化されているのは、本当にごく一部だった。
原料の大豆を洗浄する部分と、蒸した後につぶす作業。
それ以外はすべて地道な手作業で行われている。
もっとも壮観だったのは16個の大釜。
ガスも使わずクヌギの木を薪としてくべて、
1時間ふつふつ煮込み、5時間蒸らす。
万が一にも焦げないように、冷水を差しながら、
噴きこぼれたぶんはその都度丁寧に拭き取る。
それらを行うのは地元の住民たちだ。
おそらく竹長然のテンジャンを語るうえで、
もっとも重要なのがこの部分であろうと思う。
「ウチには名人がいないんです」
と社長が語るように、竹長然のテンジャンは、
社員と地元の人が共同作業で造っている。
テンジャンを仕込むのは基本的に農閑期であるため、
手の空いた人たちが交代で手伝っているのだ。
それは村の人にとって新たな収入源であり、
作物の安定的な販路確保という意味合いもある。
地元の人と手を取って、地域の名物を作り上げる。
それこそが竹長然の目指す道であるらしい。
そこだけ聞くと出来過ぎた話にも思えるが、
地元との関係は、もともと社長のお父様との付き合い。
かつてお父様がこの地域の人と仕事をしており、
その人間関係を息子である社長に譲った形だ。
社長は自分のビジネスとして工場を立ち上げ、
親子2代の付き合いを、より強固なものにしている。
月並みな美談ではない、地に足のついた人間関係だった。
工場の敷地をひと通り見学した後、
地元の人の家で、昼食をご馳走になった。
村には飲食店もないので、誰か見学に来たときは、
そこでもてなすのが通例であるらしい。
竹長然のテンジャン、コチュジャン、カンジャンと、
地元でとれた山菜、野草などを料理したもの。
そう書くと、ありふれた総菜料理に思えるが、
出てきたものは、息を飲むほどに素晴らしかった。
主菜として出た料理がこんな感じ。
・ネンイテンジャンチゲ(ナズナの味噌チゲ)
・テンジャンスックッ(ヨモギの味噌汁)
・サグァプルコギ(リンゴを添えた牛肉炒め)
・コチュジャントク(コチュジャン味のチヂミ)
ちなみにリンゴもこの地域の名産品だ。
また、箸休めとしてのチャンアチ(醤油漬け)も、
山間部ならではの素材で構成されていた。
・トゥルプ(タラの芽)
・オガピ(五加皮、ウコギの根の皮)
・ジェピ(ケカラスザンショウの葉)
・野生のキノコ
いずれも鮮烈な香りと風味に優れ、
ほろ苦さと、醤油の塩気が食欲をそそる。
メインの料理も副菜類も、箸を伸ばせば伸ばすほど、
もうごはんが進んで仕方がなかった。
味付けもさることながら、素材そのもののよさ。
それは竹長然が誇る、原材料のよさにも通ずるものだ。
なるほど、これは驚嘆すべき説得力である。
「また来てくださいね」
という社長らのセリフに、
「ぜひ!」
と答えたのは言うまでもなし。
地元と自然に密着するプレミアムテンジャン。
その未来は大きな可能性に満ちている。
<会社情報>
社名:竹長然(チュッチャンヨン)
住所:慶尚北道浦項市南区虎洞573
電話:054-283-1530
http://jookjangyeon.com/
<お知らせ>
3月21日(木)に新刊が発売になりました。
タイトルは「韓国料理には、ご用心!」。
版元は三五館、定価は1260円(税込)。
ここ10年ほどの日本における韓国料理事情を、
ギュッとまとめて整理をしたという内容です。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1503.html
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
竹長然は安東からも約1時間の距離。
安東→竹長然→浦項というコースもよさそうです。
コリアうめーや!!第290号
2013年4月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
メールマガジン購読・解除用ページ
http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669
<ごあいさつ>
4月になりました。
本日まで韓国を出張していましたが、
幸運なことに各地で満開の桜を見られました。
ちょうど南から北上していくルートだったので、
桜前線とともに旅をしていた感じですね。
期せずしてなんとも風流な旅でしたが、
日程の大半は、花より団子。
おかげさまでたくさんの料理を食べ歩き、
今回も実り多き出張だったことを報告します。
あとはそれをしっかり書くだけ。
今号からしばらくは出張ネタが続きます。
コリアうめーや!!第290号。
どれにしようかなの、スタートです。
<プレミアムテンジャンの工場見学!!>
さて、どの話から書こうか。
3月21日から11泊12日の出張に出て、
久々に手持ちのネタがホクホクである。
序盤の済州島料理も新たな発見が多かったし、
中盤の慶尚道料理、終盤の京畿道料理も面白かった。
最後の最後で食べたソウルの料理も印象深い。
嬉しい悩みというところだが……。
うん、やっぱりコレだな。
今回の出張は前々回のメルマガで書いた……。
「あと来月浦項に来い。味噌仕込むから」
「え゛!?」
「取材していけ。メシぐらいおごるぞ」
「え、えーっと……」
という会話がきっかけのひとつ(下記参照)。
コリアうめーや!!第288号
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1500.html
前半は済州島のグルメツアーだったが、
後半のほとんどは慶尚道中心の取材となった。
もちろん今年、2013年が、
「釜山・蔚山・慶尚南道訪問の年!」
というのも大きな理由ではある。
それがために慶尚道の南部をあちこち巡ったが、
僕が呼び付けられた浦項(ポハン)は北部。
仮にテンジャン(味噌)取材がなかったとすると、
もっと時間をかけて南部をまわることもできた。
それをしなかったのは、ひとえに……。
韓国人を兄さんと呼ぶというのは、
「来い!」
「はい!」
という関係であるということ。
これを愚直に実践した1点に尽きる。
もらったテンジャンが美味しかったとか、
これまで浦項を訪れる機会がなかったとか。
あるいは、
「メシぐらいおごるぞ」
の部分に心がヒクヒクしたとか。
細かく見ていけば、理由はいろいろあるけれども、
「八田靖史は韓国的な義理を重んじる人物である!」
ということを証明するための出張だった。
うん、ウダウダ書かなくてもオレ偉いよね。
ということでテンジャン取材の話である。
前回からの繰り返しにもなるが、
プレミアムテンジャンの工場が浦項にある。
会社名、そしてブランドの名前が……。
「竹長然(チュッチャンヨン)」
これは竹長面(チュッチャンミョン)という、
工場を設立した地域の名前に由来している。
最後の「然」は社長の名前から取ったものであり、
また、テンジャンのキャッチコピーである……。
「自然と歳月以外は何も入れていません」
という部分にもかかっている。
竹長然を象徴する大きなキーワードとして、
「地元と自然」
という両者をまず抑えておきたい。
そして、その地元と自然のある地域だが、
浦項の中でも、かなりの山間部に位置する。
市街地からは車に乗って約1時間。
事前にある程度、田舎だとは話に聞いていたが、
その想像をもはるかに超えるド田舎であった。
嘘か本当かはわからないが、
「このへんの住人は朝鮮戦争を知らなかった!」
という話を現地で聞かされたほど。
ブラックジョークのたぐいだと思いたいが、
さもありなんという田舎ぶりだった。
つづら折りの山道をうんざりするほど走り、
廃校の角を曲がった、村のどんづまりが竹長然の工場。
一面、山しかない場所にようやくたどりついた。
迎えてくれたのは竹長然の社長である。
敷地内を巡りながら、原料や製法について話を伺う。
「主力商品はいうまでもなくテンジャンです」
「それとともにコチュジャンとカンジャン(醤油)」
「いずれも伝統製法にこだわっています」
「原材料の大豆や唐辛子はこの村で栽培したもの」
「ここは海抜450mの高冷地で良質の作物が育ちます」
「テンジャンの場合、原材料は大豆、塩、水のみです」
塩は全羅南道新安産の3年寝かせた天日塩。
水は敷地内の地下200mから汲み上げた岩盤水。
こだわりはあるが、素材としてはシンプルだ。
それを隣町、青松(チョンソン)の名人が作った、
伝統製法の甕に入れてじっくり熟成させる。
あとは時間と自然が極上の味に仕上げてくれる。
「ここには2000個の甕があります」
ということで甕の保管場所を見にいったが、
山間部にずらりと並ぶ光景はさすがに見事だった。
今後はそれを5000個まで増やすらしい。
併せて体験場やゲストハウスの建設も予定している。
また、地下貯蔵庫ではできたテンジャンを長期保存し、
ビンテージごとに販売する計画もあるという。
未来を語る社長の表情は、満面の笑顔であった。
一連の製造工程も見学させてもらったが、
機械化されているのは、本当にごく一部だった。
原料の大豆を洗浄する部分と、蒸した後につぶす作業。
それ以外はすべて地道な手作業で行われている。
もっとも壮観だったのは16個の大釜。
ガスも使わずクヌギの木を薪としてくべて、
1時間ふつふつ煮込み、5時間蒸らす。
万が一にも焦げないように、冷水を差しながら、
噴きこぼれたぶんはその都度丁寧に拭き取る。
それらを行うのは地元の住民たちだ。
おそらく竹長然のテンジャンを語るうえで、
もっとも重要なのがこの部分であろうと思う。
「ウチには名人がいないんです」
と社長が語るように、竹長然のテンジャンは、
社員と地元の人が共同作業で造っている。
テンジャンを仕込むのは基本的に農閑期であるため、
手の空いた人たちが交代で手伝っているのだ。
それは村の人にとって新たな収入源であり、
作物の安定的な販路確保という意味合いもある。
地元の人と手を取って、地域の名物を作り上げる。
それこそが竹長然の目指す道であるらしい。
そこだけ聞くと出来過ぎた話にも思えるが、
地元との関係は、もともと社長のお父様との付き合い。
かつてお父様がこの地域の人と仕事をしており、
その人間関係を息子である社長に譲った形だ。
社長は自分のビジネスとして工場を立ち上げ、
親子2代の付き合いを、より強固なものにしている。
月並みな美談ではない、地に足のついた人間関係だった。
工場の敷地をひと通り見学した後、
地元の人の家で、昼食をご馳走になった。
村には飲食店もないので、誰か見学に来たときは、
そこでもてなすのが通例であるらしい。
竹長然のテンジャン、コチュジャン、カンジャンと、
地元でとれた山菜、野草などを料理したもの。
そう書くと、ありふれた総菜料理に思えるが、
出てきたものは、息を飲むほどに素晴らしかった。
主菜として出た料理がこんな感じ。
・ネンイテンジャンチゲ(ナズナの味噌チゲ)
・テンジャンスックッ(ヨモギの味噌汁)
・サグァプルコギ(リンゴを添えた牛肉炒め)
・コチュジャントク(コチュジャン味のチヂミ)
ちなみにリンゴもこの地域の名産品だ。
また、箸休めとしてのチャンアチ(醤油漬け)も、
山間部ならではの素材で構成されていた。
・トゥルプ(タラの芽)
・オガピ(五加皮、ウコギの根の皮)
・ジェピ(ケカラスザンショウの葉)
・野生のキノコ
いずれも鮮烈な香りと風味に優れ、
ほろ苦さと、醤油の塩気が食欲をそそる。
メインの料理も副菜類も、箸を伸ばせば伸ばすほど、
もうごはんが進んで仕方がなかった。
味付けもさることながら、素材そのもののよさ。
それは竹長然が誇る、原材料のよさにも通ずるものだ。
なるほど、これは驚嘆すべき説得力である。
「また来てくださいね」
という社長らのセリフに、
「ぜひ!」
と答えたのは言うまでもなし。
地元と自然に密着するプレミアムテンジャン。
その未来は大きな可能性に満ちている。
<会社情報>
社名:竹長然(チュッチャンヨン)
住所:慶尚北道浦項市南区虎洞573
電話:054-283-1530
http://jookjangyeon.com/
<お知らせ>
3月21日(木)に新刊が発売になりました。
タイトルは「韓国料理には、ご用心!」。
版元は三五館、定価は1260円(税込)。
ここ10年ほどの日本における韓国料理事情を、
ギュッとまとめて整理をしたという内容です。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1503.html
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
竹長然は安東からも約1時間の距離。
安東→竹長然→浦項というコースもよさそうです。
コリアうめーや!!第290号
2013年4月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
メールマガジン購読・解除用ページ
http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000669

「サムギョプサル?」
「ううん」
「え、サムギョプサルでしょ?」
「いやいやいや」
「豚バラ肉の焼肉=サムギョプサルだよね?」
「まあね」
「どう見てもサムギョプサルじゃん!」
「ふっ、違うね!」
「じゃあ、なんなのさ」
「こいつはな」
「こいつは?」
「こいつは、ただの豚!」
「ただの豚?」
「そう、包まぬ豚は、ただの豚ぁっ!!」
というネタを仕込んだまま出張に出てしまいました。
ちょうど食べに行ったのが、出張に出る前々日。
心残りをようやく解決できてホッとしています。
新刊「韓国料理には、ご用心!」の60~61ページにも書きましたが、
この「ベジテジや」は関西を拠点とするサムギョプサル専門店。
2006年8月に京都、深草に1号店をオープンして以来、
短期間で勢力を伸ばし、現在は9都府県で20店舗を展開しています。
東京には今年2月、渋谷、池袋に進出しました。
サムギョプサルメインの専門店としては国内最大の店舗数です。

そんな「ベジテジや」における人気の秘密が、
びっくりするほどバリエーション豊かな包み素材という部分。
冒頭にもってきた、
「包まぬ豚は、ただの豚」
というキャッチコピーがすべてを物語ります。
上の写真に並んでいるのは、
・京風包みもち
・玄米クレープ
・トルティーヤ
という包み素材3種。

さらには、
・丸ごとトマトキムチ
・マスタードごろっとポテト
・ゼンマイナムル
といった小皿類があって、これらをトッピングと総称します。
サムギョプサルそのものにも味のバリエーションがあり、
それらとトッピングを掛け合わせることで無限大の可能性を引き出す。
それが「ベジテジや」の大きなコンセプトということです。
それではみなさん、もう1度大きな声で……。
「包まぬ豚は、ただの豚!」

自社農園で栽培する手のひらサイズのサンチュで包み……。

ロールサンド風にトルティーヤで包み……。

香ばしい風味の玄米クレープで包み……。

もっちり食感でほの甘い、京風包みもちで包み……。
次はどれで包もう、どのトッピングを追加しよう、
どれとどれを組み合わせよう、と悩むことこそが楽しさ。
ある種、手巻き寿司のようなワイワイ感が魅力です。

ただ、僕が思うに、この店が成功した理由って、
決して包み素材がたくさんあるからだけじゃないですね。
薬味用のプレートが給食風でユニークさを演出していたり、
その使い方がひと目でわかるように工夫されていたり。
細かい部分に気配りがあり、また遊び心があります。

ミニパンに載ったチャプチェ(春雨炒め)なんかこう見えて、
名前が「バジルチャプチェ」でどう味わってもイタリアン。
きちんと韓国風のチャプチェも用意してありますが、
変化球でもしっかり驚かせてくるあたりは見事です。
これ知らずに食べたら、びっくりするでしょうねぇ。

シメの一品には、京都伏見チゲを注文。
酒かすがたっぷり効いた、とろとろの和風チゲでした。
いろいろ発見があり、想像力をかきたてられた夜。
いまのところ東京では渋谷、池袋の2店舗だけですが、
ホームページを見る限り、東久留米でも今月オープンの模様。
そちらはフードコートでのファストフードのようですね。
この勢いだと、まだまだ店舗は増えていきそうな印象。
東京のサムギョプサル事情にどのような化学変化が起こるのか。
今後の展開も含め、楽しみにしていきたいと思います。
店名:ベジテジや 池袋西口店
住所:東京都豊島区西池袋1-38-5セイコービル2階
電話:050-5797-0761
営業:18:00~翌5:00
定休:なし
http://vege-teji.com/
<お知らせ>
日本で進化する韓国料理~食の韓流10年を振り返る~
http://www.rihga.co.jp/osaka/culture/single/detail/korean.html
<新刊情報>
韓国料理には、ご用心!
http://www.amazon.co.jp/dp/4883205800/
http://books.rakuten.co.jp/rb/12257440/
<紹介記事>
スポーツソウルジャパン
http://www.sportsseoul.jp/article/read.php?sa_idx=4447
スポーツソウルJAPAN(プレゼント企画)
http://sportsseoul.jp/event/2013/book/index.php

出張報告はこれで最後。
前日に望遠洞で3次会まで楽しんだ翌朝は、
2度目のヘジャン(酔い覚まし)からスタートしました。
宿の近くでソルロンタン(牛スープ)です。
一応、ソルロンタンはソウル発祥とされているので、
見方によっては、これも郷土料理のひとつといえます。
これで胃を整えた後、カフェで仕事などもしつつ、
知人の紹介で取材に向かったのは……。

皇后サムゲタン、改め「皇后名家(ファンフミョンガ)」。
すでにガイドブックなどでも常連格のお店ですが、
今年2月に仁寺洞から、景福宮へと移転したそうです。
まだそれを知らない人も多いらしく、
「ぜひ大々的に移転を伝えてください!」
というたいそうなリクエストを頂きました。
大々的かどうかはともかく、まずその情報をお伝えします。
店名:皇后明家光化門本店
住所:ソウル市鍾路区通義洞35-12
電話:02-739-0145
http://www.hwanghusamgyetang.com/
ちなみに場所は有名店「土俗村」のすぐ近く。
なんでそんな場所にわざわざ、とも思ったのですが、
話を聞いたところ、いろいろな戦略があるみたいですね。
有名店との比較で、自店の個性を浮き彫りにするのがひとつ。
また界隈をサムゲタンで盛り上げようというのがもうひとつ。
そして後で詳しく書きますが、土地縁との関係もあるそうです。
自治体とも連携をしつつ、
「いずれはここをサムゲタン通りにしたい!」
という計画もある様子。
まあ、確かに話題性はありますよね。

そんな「皇后名家」の目玉がコチラ。
・長脳山参(天然環境で栽培した特別な高麗人参)
・莞島産の活アワビ
・冬虫夏草(ハナサナギタケ)、
・三枝九葉草(キバナイカリソウ)
といった特別な素材を加えた豪華サムゲタン。
なんとお値段……。
「3万8000ウォン!」
というからけっこうな迫力です。
一応、これ以外にももう少し値段の安いものもあり、
・仁寺洞サムゲタン(1万4000ウォン)
・逸品サムゲタン(1万7000ウォン)
・名家サムゲタン(2万8000ウォン)
・皇后サムゲタン(3万8000ウォン)
といった感じのラインナップになっています。
いちばん安い仁寺洞サムゲタンがベースとなっており、
そこに希少な食材を足していくことで値段がアップします。
逸品サムゲタンには山参培養根(天然物を培養栽培した高麗人参)と、
漢方薬の蓮子肉(ハスの種)、魚腥草(ドクダミ)を加えたもの。
名家サムゲタンは山参培養根に冬虫夏草が入るそうです。
このあたりのコンセプトから見えてくるように、
「皇后名家」が目指しているのは高級志向のサムゲタン。
店内もモダンにまとめ、伝統的な韓屋スタイルの「土俗村」と、
料理の面でも、雰囲気の面でも差別化を図ったようです。
「伝統VSモダン 景福宮サムゲタン対決!」
とアオリ文句でもつけたくなりますね。
ただ個人的には「土俗村」のサムゲタンも大好きなので、
対決の構図よりも、相乗効果で盛り上がって欲しいところ。
食べての感想としても、味のベースがしっかりしているのを前提に、
いろいろな希少食材を味わえるという部分が楽しかったです。
御馳走になったので、自腹を切った訳ではありませんが、
この店で食べるなら、高いメニューを選ぶべきかなとは思いました。
シンプルなサムゲタンなら、それこそ「土俗村」でいいですし。
そのあたりでうまく噛み合えば、サムゲタン通りも夢ではないかと。
後発店がさらに出てくるか、という兼ね合いもありますけどね。

そして、もうひとつの目玉料理がコチラ。
やや異色のアレンジですが、チョゲタン(鶏の冷製スープ麺)です。
もともとは北朝鮮の平壌近辺、平安道で夏に食べた郷土料理で、
ソウルでも老舗の冷麺店に行くとたまに扱っています。
見た目にも凝っているのは高級志向の現れでしょうが、
全体のレシピを作ったのが、金秀珍(キム・スジン)先生と聞いて納得。
韓国料理研究院「フード&カルチャーアカデミー」の院長であり、
ドラマ「食客」の料理監修を担当した方としても有名です。
なお、チョゲタンのほうは値段が1万4000ウォンと比較的お手頃なので、
これと皇后サムゲタンを2人で頼み、シェアする人も多いそうです。

ちなみにチョゲタンと聞いて僕がイメージするのはこんな感じ。
乙支路3街の「平来屋(ピョンネオク)」で食べたものです。
鶏スープ、裂いた鶏肉、生野菜、蕎麦麺というのが構成要素ですが、
「皇后名家」ではスープをシャーベット状にして爽快感をアップ。
さらには麺も小麦粉の生麺にかえるなど、大胆にアレンジしています。

高麗人参酒のかわりに柿エキスというのもシャレた部分。
アルコール度数が1%程度ということなので弱い方でも大丈夫です。

そして、これが土地縁の関係にかかわる松の木。
店のすぐ隣にあって、窓からも眺めることができます。
この松がある場所は、かつて彰義宮という邸宅があり、
後に朝鮮王朝の第21代王となる英祖が住んでいたそうです。
残念ながら建物自体は1908年に取り壊されていますが、
そこに立っていた松だけは現代まで象徴として残りました……。
が、1990年の台風で倒れてしまったそうですね。
いま見えているのは、その倒れた松の新芽が育ったもの。
現在は4本の松として成長し、中央には原木の切り株が残っています。
そういった逸話も含めつつ。
朝鮮時代に王様が眺めた(だろう)松がすぐ隣にあるのは、
店名に「皇后」を掲げているだけに、ひとつの縁といえましょう。
「西村(ソチョン)エリアの観光も兼ねて立ち寄って欲しい」
というのが社長の弁です。

出張報告はこれで以上。
いつもなら空港のロッテリアで最後の1食を楽しむのですが、
今回はさほど目新しいメニューもなかったのでパスしました。
なので、かわりに済州島土産を紹介して締めくくりとします。

新商品の済州島土産として店に人に薦められたのですが、
名産品のミカンをスライスして、そのまま乾燥させたもの。
カリカリ食感と、甘酸っぱい味わいがなかなかいけます。
今度から済州島のお土産はコレだな、と心に決めたほど。
個包装なのでバラマキ用としてもちょうどいいですね。
家用に買ってきたものを、少しずつ楽しみに食べています。
さて、11泊12日に渡った出張報告はこれでいったんおしまい。
出張報告というタイトルとは別に、小ネタをまとめたり、
メルマガとして書いたり、別の形では登場しますけどね。
あちこちコラムのネタにも活用していく予定です。
最後にこれまでの出張報告を一覧でまとめます。
お店情報もようやく整理しましたので一緒に掲載しました。
なかなか気軽に行くのは難しい地域ばかりですが、
もし行くチャンスがあるようならぜひ参考にしてください。
ただ、毎回ツアーのお店だけはいつも非公開にしています。
それも含めて参加した人だけの特典! ということなのですが、
今回ばかりは「るるぶ済州島」を見るとほとんどモロバレですね。
どうしても食べたい人は「るるぶ済州島」を見てください。
出張報告(1)済州島にやってきました。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1505.html
出張報告(2)ツアー前の自主食べ歩き。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1506.html
<チャドルバギ、チェビチュリ>
・チャドルチプ(済州道済州市蓮洞291-7/064-747-8976)
<ケクチュリジョリム>
・トゥルドゥル食堂(済州道済州市蓮洞291-10/064-744-9711)
<コギグクス>
・オルレグクス(済州道済州市蓮洞261-16/064-742-7355)
<パンオフェ、ティギム>
・蓮洞馬羅島フェッチプ(済州道済州市蓮洞262-10/064-746-2286)
出張報告(3)済州島まるごと食べつくしの旅開始。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1507.html
出張報告(4)グルメツアー2日目に食べたもの。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1508.html
出張報告(5)グルメツアー3日目に食べたもの。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1509.html
出張報告(6)グルメツアー最終日に食べたもの。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1510.html
<コギグクス>
・姉妹グクス(済州道済州市一徒2洞1034-10/064-727-1112)
出張報告(7)釜山・蔚山・慶尚南道を大移動で訪問。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1511.html
<宜寧ソバ>
・タシ食堂(慶尚南道宜寧郡宜寧村西洞里491-7/055-573-2514)
<マンゲトク>
・宜寧マンゲトク(慶尚南道宜寧郡宜寧村西洞里485-16/055-573-2422)
<ポックッ(トラフグ)>
・ナムソン食堂(慶尚南道昌原市馬山合浦区午東洞251-8/055-246-1856)
<ポックッ(シマフグ)>
・クァンポポッチプ(慶尚南道昌原市馬山合浦区午東洞251-158/055-242-3308)
<トゥンシム、カクトゥギユッケ>
・マンボンネスップルグイ(蔚山市蔚州郡斗東面鳳渓里871-7/052-262-7255)
出張報告(8)プレミアムテンジャンの生産地を訪ねる。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1512.html
<プレミアムテンジャン>
・竹長然(慶尚北道浦項市南区虎洞573/054-283-1530)
<クァメギ>
・ミド水産(慶尚北道浦項市北区竹島洞68-24/054-247-9594)
<ムルフェ>
・ピョルミボクピョルミフェ(慶尚北道浦項市北区港口洞17-162/054-247-3727)
<マンドゥ>
・永生徳(大邱市中区鍾路2街20/053-255-5777)
<テント屋台>
・北城路一帯
出張報告(9)盈徳ズワイガニ祭りでカニ三昧。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1513.html
<盈徳テゲ>
・サゲジョルテゲ直販場(慶尚北道盈徳郡江口面江口里256-61/054-734-2777)
<ムルフェグクス>
・ファンヨフェッチプ(慶尚北道浦項市北区斗湖洞190-9/054-251-8847)
<エビ、チョゲグイ>
・パダイヤギ(慶尚北道浦項市北区斗湖洞611/054-255-9995)
出張報告(10)大邱の謎中華と水原カルビに舌鼓。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1514.html
<ソモリコムタン>
・ハルメソモリコムタン(慶尚北道浦項市北区南浜洞989-28/054-247-8660)
<カキウドン、ケランパン>
・永生徳(大邱市中区鍾路2街20/053-255-5777)
<水原カルビ>
・佳甫亭カルビ(京畿道水原市八達区仁渓洞958-1/031-232-3883)
出張報告(11)チャンポンとハンバーガーと望遠洞。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1516.html
<チャンポン>
・迎賓楼(京畿道平沢市新場洞212-10/031-666-2258)
<ハンバーガー>
・Miss Leeハンバーガー(京畿道平沢市新場2洞298-88/031-667-7171)
<ハンバーガー>
・Miss JINハンバーガー(京畿道平沢市新場洞302-94/031-667-0656)
<太白タッカルビ>
・太白タッカルビ(ソウル市麻浦区望遠洞418-24/02-322-3177)
<ヌルンジトンダク>
・ケリムウォン望遠店(ソウル市麻浦区望遠洞416-49/02-336-2977)
<スンデクッ>
・カマソッスンデ(ソウル市麻浦区城山洞279-17/02-333-8390)
出張報告(12)最後はソルロンタンとサムゲタン。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-1517.html
<ソルロンタン>
・新村ソルロンタン新村店(ソウル市西大門区滄川洞29-72/02-313-7555)
<サムゲタン、チョゲタン>
・皇后明家光化門本店(ソウル市鍾路区通義洞35-12/02-739-0145)
<お知らせ>
日本で進化する韓国料理~食の韓流10年を振り返る~
http://www.rihga.co.jp/osaka/culture/single/detail/korean.html
<新刊情報>
韓国料理には、ご用心!
http://www.amazon.co.jp/dp/4883205800/
http://books.rakuten.co.jp/rb/12257440/
<紹介記事>
スポーツソウルジャパン
http://www.sportsseoul.jp/article/read.php?sa_idx=4447

エイプリルフールネタとともに帰国報告をしましたが、
最後の2日間が残っているので、出張時の話題を続けます。
水原で泊った翌日、また少し南下して向かったのは、
京畿道平沢(ピョンテク)市の松炭(ソンタン)という町。
まず目指した料理が冒頭のチャンポン(激辛の海鮮麺)でした。
大邱でチャンポンを食べに行ったら1時間半待ちの行列で、
食べ逃したモヤモヤが、どうにも解消できなかったんですよね。
これはもうどこかでチャンポンを食べねば収まらないということで、
同じく行列のできるチャンポン専門店を目指した次第です。
「迎賓楼(ヨンビンヌ)」という名前の店ですが、
大邱の店とともに「韓国5大チャンポン」のひとつに数えられます。
なんでも、有名グルメブロガーの方が選定をしたらしいのですが、
それがかなりの反響を得て、現在はすっかり定着した様子。
5大チャンポン目当てに地方を巡るファンも多いそうです。
そりゃ、参加しなきゃでしょ!
ということで今後は下記の店を巡りたいと思います。
・迎賓楼(京畿道平沢市)
・ポクソンヌ(全羅北道群山市)
・トンヘウォン(大田広域市)
・チヌン飯店(大邱広域市)
・校洞飯店(江原道江陵市)
ちなみに「迎賓楼」のチャンポンは昔ながらのスタイル。
細切りにした豚肉とイカがどっさり入って旨味のベースを作り、
そこにタマネギ、キャベツなど、野菜の甘味が加わります。
なるほど、確かにシンプルながら美味しいチャンポンでした。

そして、もうひとつ。
松炭という町には大きな特色があります。
本来、5大チャンポンのひとつを有する町というよりは、
米軍基地がある英語圏のような雰囲気の町なんですよね。
ある種、ソウルの梨泰院にも似た感じの街並みです。
そんな松炭における名物料理が……。

ハンバーガー。
米軍基地に勤務するアメリカ軍兵士を対象に、
1980年代初頭から、ハンバーガーが売られ始めたといいます。
現在は米軍基地の入口近くに2軒の有名店があり、
上の写真が「Miss Leeハンバーガー」で撮ったもの。

そしてこちらが「Miss JINハンバーガー」で撮ったもの。
どちらが元祖かはいろいろ事情があるようですが、
僕が食べ比べた感じではどちらに行っても一緒です。
両者ともにいい感じのレトロ感と、手作り感があり、
ボリュームたっぷりで、値段も安く、トータルで満足のゆく味。
わざわざこのためだけに行くのはモノ好きな人だけでいいですが、
もし近くに行く用事があるなら、食べると話のタネになるでしょう。

松炭でチャンポン1人前とハンバーガー2個を胃に収め、
ずっしり重くなった胃袋を抱えて、そのままソウルへと移動。
繁華街の新村(シンチョン)に最後の宿を取りました。
そこでまずお会いしたのが、こんな本を翻訳した方。
頂いた名刺には通訳、翻訳と書かれていましたが、
最近はむしろ、コスメライターとしての活動が多いそうですね。
ずっと前からメールのやり取りはしておりましたが、
実際、お会いするのは、これが初めての機会でした。
韓国コスメ イヤギbyジャヨンミ
http://jayeonmi547.blog2.fc2.com/
韓式イヤギbyジャヨンミ
http://ameblo.jp/jayeonmi/
言われるまでまったく気付いておりませんでしたが、
最新版の「るるぶ韓国'14」にもブロガーとして登場されていたり。
ほかにも共通の知人がいるなど、実はかなりの接点があり、
短い時間でしたが、あれこれと盛り上がりました。

その後、ドタバタと移動したのは望遠洞(マンウォンドン)。
2号線の合井(ハプチョン)からひと駅の場所ですが、
弘大(ホンデ)からも近く、グルメの穴場として知られます。
観光客というよりも、在住者に人気のあるエリアですが、
弘大、合井の延長線上で、いずれのブレイクが期待されるところ。
上の写真は、江原道の太白(テベク)という地域の名物で、
太白タッカルビ、またはクンムル(スープ)タッカルビと呼ばれます。
一般にタッカルビといえば鶏肉と野菜の鉄板炒めを指しますが、
ルーツをたどると、もともとは鍋料理だったとの説があります。
その片鱗を見せてくれるのが、太白式の大きな特徴ですね。
こういう珍しいものも食べられるのが望遠洞の魅力。
「ぜひとも望遠洞をメジャーな存在に!」
という話で盛り上がりました。
テベククンムルタッカルビ
http://www.rakukorea.asia/detail/info/407

そんな望遠洞の未来を語る集まりに、ご参加頂いたのが、
韓国在住のドイツ文学者で、比較文化学者の平井敏晴さん。
そして、こちらの本の著者でもあります。
韓国人には、ご用心!
http://www.amazon.co.jp/dp/4883205614
僕の新刊と同じく、三五館から出ているご用心シリーズのひとつ。
以前、東京でお会いしたときは、本当にちらりとだったので、
今回こうしてゆっくりご一緒できたのは嬉しかったですね。
次回作の構想など、いろいろ貴重なお話を聞かせて頂きました。

やがて酒席は2次会へと移動。
同じく望遠洞のレア料理から、ヌルンジトンダクです。
薪の火でローストした丸鶏の下に、ごはんのオコゲを敷いた一品。
パリパリの鶏皮&オコゲという両者の組み合わせが絶妙ですね。
スモーキーな風味とともに、ビールがぐいぐい進む料理です。
ヌルンジトンタク専門店
http://rakuten.k-navi.kr/detail/info/389

途中でこんなスイーツもつまみつつ。
韓国地方旅行研究家のトム・ハングルくんが、
鎮海(チネ)の軍港祭を取材したお土産として差し入れてくれました。
桜の有名な地域なので、桜を模したポッコッパン(桜パン)。
中には桜風味のあんが入っており、なかなかの風情があります。
トム・ハングルの韓国地方旅行記
http://yonday.blog96.fc2.com/

そして日付がかわる頃の3次会。
望遠洞談義がどれほど盛り上がったかがよくわかります。
スンデクッ(腸詰め入りのスープ)の店を選んでくれたのは、
韓国情報インターネットラジオ「韓ラジ」の主催者さん。
そのうち僕もラジオに出させてくれるらしいです。
韓ラジ
http://www.facebook.com/kanradi
以上、本当によく食べ、よく飲んだ帰国前日の記録。
あと1日、最終日の報告を書いたら出張シリーズは終了です。
<お知らせ>
日本で進化する韓国料理~食の韓流10年を振り返る~
http://www.rihga.co.jp/osaka/culture/single/detail/korean.html
<新刊情報>
韓国料理には、ご用心!
http://www.amazon.co.jp/dp/4883205800/
http://books.rakuten.co.jp/rb/12257440/
<紹介記事>
スポーツソウルジャパン
http://www.sportsseoul.jp/article/read.php?sa_idx=4447